「このパルムドールを受賞した作品は、今日のフランスで、学校教育にどんな困難な問題があるかを、私たちに示してくれている。そしてまた、この作品の基調となって、生徒たちのために尽くしている教師たちの努力や希望、そしてそんな努力の結実が描かれている」
パルムドール受賞作へのサルコジ大統領の賛辞。その大統領の教職員数削減策に、教師や高校生たちがデモを繰り返していることは知らぬ存ぜず…?
「私は自由主義的な社会主義者ではないが、〈リベラル〉というコトバを頭ごなしには否定しない。共和国のベースが民主主義であるように、自由主義のベースには自由があるという意味で、私は自由主義者だ。現在の右派は自由主義者ではない。左派は、誇りを持って、このコトバとその内容を自分のものにすべきだ。(…)もし21世紀の社会主義者たちが、自由主義を正しい意味でようやく認め、それが『競争』や『せめぎ合い』という意味から解き放たれた時、ヒューマンな自由主義が、イデオロギーとして存在するようになるだろう」
セゴレーヌ・ロワイヤル氏に対抗して次期大統領選社会党候補になることを目論むベルトラン・ドラノエ・パリ市長。最近出版した『De l’audace 大胆さに関して』(Robert Laffont社発行)で、社会党内では禁句ともいえる「自由主義 libéralisme」を肯定したので、社会党内で大論争。
「公共のサービスや教育がおろそかにされるといった自由経済の悪影響に誰がブレーキをかけるのか? 私は社会主義者であり、自由主義者ではない。こんなことではサルコジ大統領時代はまだまだ続くだろう」
ノール県の一社会党員。
5月25日、カンヌ映画祭の閉会式で、最高賞のパルムドールには、荒れる中学の一学級を描いた『Entre les murs クラス』(ローラン・カンテ監督)が受賞。フランス映画としては21年ぶりの栄誉に。
映画に出演した中学生に囲まれたローラン・コンテ監督。作品評は9ページに。
グランプリは『Gomorra』(伊マッテオ・ガローネ監督)、女優賞は『Linha de passe』のブラジルのサンドラ・コルヴェローニ、男優賞は『Che』でチェ・ゲバラを演じた米ベニチオ・デル・トロ、監督賞は『Les Trois Singes』を撮ったトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、審査員賞には『Il Divo』の伊パオロ・ソレンティーノ監督。〈ある視点〉部門では黒沢清監督の『トウキョウソナタ』が審査員賞を獲得した。
●パリの〈イラクネットワーク〉に禁固刑
パリ軽罪裁判所は5月14日、反米側戦士として戦う若者をイラクに送り込む組織のメンバーとされる7人に、18カ月から7年の禁固刑を言い渡した。被告は24歳から43歳までのフランス人5人とアルジェリア人、モロッコ人が各1人で、2003~05年にイラクの「聖戦」のため、パリ19区で10人の若者を集めて訓練し、イラクに派遣していたことを認めている。
●公務員スト、国鉄ストなど相次ぐ
教員ポストの削減に反対するストとデモが5月15日に行われた。教員組合によると、小学校で63%、中・高で55%(教育省発表では各46%、34%)の教員がストに参加、全国で20~30万人がデモに参加した。同日夜、サルコジ大統領は、ストの際に、教員は48時間前にスト参加を通知すること、小学生が登校できる権利を保証する(市町村が学童保育を用意)ことを義務付ける法案を夏前に国会に提出すると発表。また、22日には年金制度改革に抗議するデモが全国で行われ、労組発表で70万人(警察発表は30万人)が参加。仏国鉄SNCFでは運転士の39%がストに参加したため間引き運転が行われ、国民の足に影響が出た。
●遺伝子組み換え作物法案可決
国民議会は5月20日、遺伝子組み換え作物(GMO)関連法案を可決した。22日には上院でも可決され、同法案は最終成立した。この法案はGMO栽培の自由を保証し、その作物を引き抜いた者には3~5年の禁固刑が科されること、GMO栽培地の場所は公開されることなどを盛り込んでいる。〈非GMO食品〉の表示基準は法には盛り込まれず、バイオテクノロジー高等評議会の判断に委ねることに。この法案には左派のほか右派の一部も反対しており、5月13日の国民議会では右派議員の欠席のために共産党議員が提出した審議中止動議が1票差で可決され、両院合同委員会が召集されて法案の修正作業をするという事態になった。
●軽油高騰で漁師らが抗議運動
軽油の高騰にあえぐ漁師たちが全国で政府の援助を求めて抗議運動を展開している。トロール船の場合、売上げ高に占める燃費の割合が2004年には15%だったのが、現在は50%に上昇。5月22日、バルニエ農漁業相と漁師代表が10時間に及ぶ協議の結果、向こう3年間で3億1000万ユーロと、1月に決定された援助を2年間に短縮し、今年度分として1億1000万ユーロの援助を行うこと、軽油価格を現在の1リットル当たり70セントから40セントに維持するよう政府が補償することを提案。漁師らはこれを不十分として抗議運動を継続している(27日現在)。
●連続女性殺人犯、フルニレ被告に終身刑
フランス北部のアルデンヌ重罪院は5月28日、7件の婦女強姦殺人犯、ミシェル・フルニレ被告(66)に30年の釈放不可能期間を含む終身刑を言い渡した。1件の殺人と他の3件の共犯罪に問われた妻のモニック・オリヴィエ被告(59)には、28年の釈放不可能期間を含む終身刑が言い渡された。フルニレ被告は1987年から2001年の間に、15歳未満の少女を含む7人の若い女性を強姦した上で殺害した罪で起訴され、3月27日から裁判が行われていた。裁判では同被告の猟奇的行動の背景や、オリヴィエ被告の関わり方の解明に注目が集まっていた。