Morilles aux epinards
昨年のクリスマスにも仲のいい友だちがやって来てくれた。レストラン〈ラ・リベルテ〉のシェフ、フランソワ特製のフォワグラの後、モリーユ茸とホウレンソウをクリームソースでまとめた一品を出したら大いに受けた。数年前に、料理上手のフランスさんの作り方を見ながら覚えた一品です。モリーユ茸は、珍しく春に採れる、高価なキノコだけれど、まだシーズンオフ。フランスさんも干したもので作っていたことを思い出し、乾燥モリーユ茸を使うことにした。50グラムで24ユーロと案の定高かったけれど、クリスマスだからと大奮発。
モリーユ茸は、柔らかくなるまで3時間ほど水に漬けて戻したら、ざるにとってさっと洗い、クッキングペーパーの上に並べてよく水気を切る。小さいものは丸ごとでいいけれど、大きかったら二つに切り分ける。
フライパンあるいはソトゥーズにバターをたっぷりとって弱火にかけ、モリーユ茸、細かなみじんに切っておいたエシャロット、レモン汁小さじ1杯を入れて、塩、コショウ。フタをして5分ほど火を通し、モリーユ茸のうま味を引き出す。ここで、液状生クリームを300cc注ぐ。しばらく火を通し、クリームがトロリとした感じになったら、さらに大さじ1杯の生クリームを加え、きざんだパセリを散らせば、豪華な〈モリーユ茸、クリームソース煮 morilles à la crème〉のでき上がり。このままで肉やトリ料理の付け合わせになるし、パスタに混ぜ込んでも素晴らしい。
今回は、フランスさん流でこれにホウレンソウを混ぜ入れる。ホウレンソウはなるべく若いものを500グラム買ってきて、よく洗って水気を切ったら、さっと塩ゆでして冷水にとり、手できつく絞ってできるだけ水気を切り、小さく切り分ける。フライパンにバターをとり、細く切っておいたベーコンを入れ、ホウレンソウを加えて、炒め合わせる。これを〈モリーユ茸、クリームソース煮〉に混ぜ入れればでき上がりだ。これをメインにしたいときは、ポーチドエッグを作って添えるといいだろう。(真)
乾燥モリーユ茸50グラム、ホウレンソウ500グラム、ベーコン50グラム、エシャロット2個、レモン、液状クリーム300cc+大さじ2杯、塩、コショウ
●morilles
モリーユ茸は春に採れるキノコ。繊細なおいしさを持っっているけれど、栽培することができなくて、採れる量も限られているので高価なのは残念。網状の笠が黒っぽい褐色のものと明るい褐色のものとあるが、前者の方が美味。笠の所に、砂や土がついていることが多いので、ざるにキノコをとって、蛇口の水で流し洗い。手間をかける時間がある人は、筆でていねいに汚れを落とせばベスト。
乾燥したものは、もちろん採り立てのものの風味には劣るけれど、冬のごちそうに合わせようという時は便利だ。生のままサラダに入れたりすることはなく、常に火を通さなければならない。今回のレシピのようなクリーム煮が定番だが、焼いた肉のうま味を溶け込ませたマデール酒風味のソースなどに混ぜ入れてもうまい。
予算が苦しくて少ししか買えなかったら、小さく切って、クリームソースに加えたり、パスタに混ぜ入れたり、スープに浮かべたりしてその香りを味わいたい。
●oursin
パリの魚屋にウニが積まれている。そのほとんどが地中海で獲られたもの。キロ20ユーロと、食べられる部分の量を考えればずいぶん高いものだけれど、一年に一度くらいは、潮の香りにむせかえるような美味を味わいたい。鮮度が一番、なるべくトゲが立っていて、触るとそれがざわざわっと動くようなものを選びたい。トゲのない口の脇からハサミを入れて、真ん中くらいで切り開け(図参照)、オレンジ色の身をスプーンですくって食べる。ボクはちょっと塩の華を振ることにしている。
●à l’étuvée
今回のレシピで、モリーユ茸のうま味を引き出すために使ったような調理法のことをà l’étuvéeという。食材をそのままか、ごく少量の油とかバターと共に鍋に入れ、フタをして弱火で火を通す蒸し煮のことだ。食材が含んでいる水分だけで調理することになるので、その分、食材の持っているおいしさを味わえる。
●盛り付ける皿を温める
フランスでは、シュークルートやフォンデュ、ブダンなどは別として、ふーふーいいながら熱々の料理を食べることは少ないけれど、それでも冷めてしまってはまずい。盛り付ける皿やソース入れなどをあらかじめ温めておくと、料理やソースを食べごろの温度に保つことができる。
一番手っ取り早いのは、オーブンの目盛りを60度くらいに合わせて、食器をしばらく入れておくこと。温度をこれ以上に高くすると、割れたりするので注意。大切な磁器なら、熱湯につけてから布巾でふいて盛り付ける方が無難だろう。電子レンジには何も入ってない食器を入れてはいけないことになっている。(真)