右派サルコジ候補53.06%、左派ロワイヤル候補46.94%、前者が圧倒的勝利を収めた。 5月2日、サッカーW杯決戦のように国民が手に汗を握った両候補のTV討論で失業問題から環境、教育、移民、EU問題までサルコジ候補の筋のとおった説得力を視聴者の53%が支持し、ロワイヤル候補は47%と、5月6日決選投票日を目前に差が拡大。第1回投票の極左候補らの得票率を合わせても36%に過ぎず、ロワイヤル氏の当選は奇跡でない限り不可能に。 敗北直後、支持者群衆の前で挨拶したロワイヤル氏の輝くばかりの笑顔には敗北の苦渋は見られない。旧態依然のイデオロギー論から抜け出せない党幹部らを無視しての彼女の孤軍奮闘が社会党自身を揺るがし、 経済のグローバル化や国内外の諸問題に処していくにはEUの数カ国のように民主社会主義への路線転換しかないことを示したといえる。大統領になれるカリスマ性も器量もなく、女だしと侮られた同候補が女性大統領の可能性を切り開いたのもこの選挙戦の画期的な点だ。 弱冠52歳のニコラ・サルコジ新大統領は、28歳でパスクワ元内相後任のヌイイ市長となり、バラデュール元首相時代以来、経済相、内相兼UMP総裁と切れ者政治家として大統領への道を猛進。強圧的内相のイメージから脱皮するのに時間がかかりそうだが、勝利の演説で「フランスはひとつ、全国民の大統領として…権威、道徳心、尊敬心を重んじ」、仕事第一の伝統的フランスへの回帰を約束する。数日前の集会では「68年革命を清算する」と豪語し、68年革命への恨みを晴らしきれないよう。選挙運動中、国家のアイデンティティと移民問題を混合し右傾化した遊説でルペン支持者を吸収し、30年来、腫瘍のごとくフランスを蝕んできた極右の国民戦線党勢力を視界から遠のかせた。さらに中道層の大半を取り込み、極右から中道まで幅広い「民衆」の心をつかむ。が、彼が掲げる自由主義経済は、英サッチャー、伊ベルルスコーニ、米ブッシュ式自由経済競争を助長させていきそうだ。 ショービズ、メディア界に人脈をもつサルコジ氏の勝利をジョニー・ アリデーやジャン・レノが祝い、3万人の群衆が集まったコンコルド広場にはエンリコ・マシアス他多くの芸能人が集合、ミレーユ・マチューがマルセイエーズを絶唱。右派の饗宴を脇目にバスチーユ広場や数都市で一部の極左分子が投石、車に放火し新大統領反発の街頭行動に出る。30年来の仏現代史の一頁が閉じられ世代交替、5年間のサルコジ時代の幕上げとなった。(君) |
大統領決選の翌日、ル・フィガロ紙(右派系)の一面は「華々しい勝利」。
リベラシオン紙(左派系)は「試練の時…」。
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