7月に起きたロンドンでの連続爆弾テロ事件後、警戒体制に入っていたパリでオルリー空港や地下鉄、国土監視局DSTに対し爆破テロを企てていた容疑者グループ9人が9月26日、パリ郊外エヴルー市とトラップ市で検挙された。彼らはアルジェリア系サラフィスト集団GSPCと関係を持ち、その首謀者サフェ・ブラダ(仏国籍35歳)は、1995年サンミッシェル駅爆弾テロ犯を「募る」役をつとめ98年に禁固刑10年を受けたが03年に釈放された。対テロ諜報班の調べで、彼は出所後GSPCとアルカイダ組織とも関係を深め、パリでの爆弾テロ計画の疑いが強まる。最近パリ19区とサン・ドニ県でもジハッド(聖戦)志願者をイラクに送り込んでいた疑いでパリ警察は十数人を逮捕したが、留置4日後に全員釈放している。 こうした仏国内でのイスラム過激派の動きが目立っているなか、アルカイダ分子とタリバンが潜むアフガニスタンに落下傘部隊210人を派兵している国フランスで、いつ連続爆弾テロが起きても不思議ではない。ロンドン連続爆破テロ犯を地下鉄内の監視ビデオが記録し短時間で犯人割出しができたばかりか、一般市民の落ち着いた態度に誰もが感心したものだ。パリの警備体制の拡充に焦るサルコジ内務相は10月19日、テロ対策草案を閣僚会議に提出する。 同草案では、銀行や商店、宗教施設など法人も建物周辺にまで監視カメラを設置でき、テロに狙われやすい建物にはその設置を義務付ける。対テロ諜報班が、航空会社保有の乗客データや、運転免許証・旅券・身分証明書などの資料カードも検索できるようにする。フランステレコムやウェブカフェ、携帯電話会社にも通話記録をある期間保存することを義務付ける。列車内での身分証明書や旅券の検査を国境20km外でも可能にする。テロ容疑者の留置期間を現4日から6日に延長。テロを計画した者への禁固刑、現10年を20年に、テロ首謀者には禁固20年を30年に延長。同犯罪判決後、仏国籍の剥奪期間10年を15年に延長。また直接テロと関係なくてもテロ容疑者を自宅に泊らせた者もテロの共犯とみなすなど。 だが個人の自由を侵害しかねないこのテロ対策草案はどこまでも応急的なもので、試行期限を向こう3年としている。つまり法令として成立させるには、2008年に国民議会の承認が必要とされている。 2007年大統領選に与党UMPから着々と出馬を準備中のサルコジ内務相の大立回り、テロ対策法案の即効力? に期待したい。(君) |
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