1979年以来、5年ごとのEU議会選挙。今年は新加盟国を含め一挙に25カ国が総数732人のEU議員を選ぶため、各国民が6月10日から13日にかけて投票した。が、旧15カ国の投票率が平均45%と史上最低であるばかりか、新加盟国の大半が20%台(スロバキア20%、ポーランド21%)と、欧州連合の前途が危ぶまれる最悪の選挙に終わった。 そして大部分の国の政権党、シュレーダー独政権、ベルルスコーニ伊政権…と軒並みに惨敗し”与党制裁選挙”となった。フランスでもシラク大統領とラファラン政権が3月の地方圏選挙に次いで強烈なパンチをあび、与党民衆運動連合UMPの得票率は16.64%(78議席のうち17議席)に留まる。一方、社会党は戦後最高率28.9%(22→31)を獲得しスペイン社会労働党(25)とともにEU議会の左派社民党系の主要勢力に。またUMPと一線を画し独自路線を貫くバイルー党首が率いる中道派仏民主連合UDFは11.95%(9→11)を獲得、極右国民戦線は9.8%(5→7)。緑の党は9.7→7.40%(9→6)と、同党マメール市長が執り行った同性同士の結婚式が得票率にひびいたよう。 英国も労働党(17)はイラク派兵反対票のあおりを食らい野党保守党(25)に敗れる。が、特筆すべきは、反EU派でEUからの脱退を主張する右翼政党の英国独立党が16.84%(3→12)に伸びていること。ナショナリズム政党の台頭は、ベルギーのフランドル地方で第2党に伸し上がった右翼政党フラームス・ブロック(14.3%)やポーランド家族連盟(16%)、スウェーデンの新政党”6月党”(14.4%)など、反EU・懐疑派がEUの進路を左右しかねない議員構成をなしつつある。EU市民とEU機構との溝がさらに深まるのではないか、EU設立以来初めての深刻な危機に直面しているといえる。 また昨年末、英国他数カ国が同意しなかったEU憲法案が6月18日、25カ国首脳会議で最大限の妥協のもとに承認された。その施行には各国の批准(議会または国民投票による)が必要だ。ブレア英首相などは国民投票にかけるようだが、国民が受け入れなかったなら、非ユーロ国、英国の脱退も考えられ、もとの島国になりかねない。 今日、移民から対テロリズム、農業政策、品質管理、消費税まで、社会・経済規制の 80%がEU議会の決定に依存している。その権限がますます増大し、実際にEUの連邦化が進んでいるのは確かなのである。(君) |
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