モロッコ人の庭師、ラダッドさん (現在40) は、91年6月、雇い主のマルシャル夫人を殺害した容疑で逮捕され、94年2月、重罪院で懲役18年の刑を宣告された。 しかしこの裁判には多くの疑問が残った。被害者の遺体が早々と焼却されただけでなく、他の重要証拠も消失している。被害者がドアに大きく血で書いたとみなされた “Omar m’a tuer” が唯一の証拠だが、筆跡鑑定でも意見が分かれ、瀕死の65歳の夫人が真っ暗闇の中で血書できるのか、という反論もある。そのうえ、人種的な発言をした裁判長の陪審への影響なども指摘された。シラク大統領は96年10月に刑期短縮の恩赦を認め、ラダッドさんは7年後に出所した。 この裁判をきっかけに重罪院の判決も控訴できるようになり、ラダッドさんはさっそく控訴の手続きをとったが、昨年11月、この訴えは却下されてしまった。「タバコをたくさん吸い、食べ物はノドを通らず、この事件のことがいつも頭の中で渦を巻いて、休みなしです」 現在はトゥーロン住まいで、マルセイユの精肉工場で働いている。妻と二人の息子さんがラダッドさんの支えだ。(真) |
“Je fume beaucoup, je ne mange pas,l’affaire tourne en permanence dans ma tête. C’est sans répit.”de la télévsion actuelle.”
ラダッドさんの無実の訴えを ジャーナリストのS・ロティロンさんが 聞き書きした一冊で、今年1月に発売された。 Le Seuil社、11.40€ |