フランス・テレコムの負債額がなんと世界一、700億euros(約8兆円)! 今年度上半期だけで122億eurosの損失!
9月12日、この天文学的な数字をボン総裁(59)が発表し、その責任をとりラファラン内閣に辞任願いを提出した。
97年まで100%国営だったフランス・テレコムを、当時のジョスパン政府が民営化 (国有株55.4%に)して以来、ミシェル・ボン総裁は、欧州市場制覇の野望に燃えバブルに身をゆだね、その崩壊のあおりを食らっての引責辞職といえる。
ボン氏は、95年にフランス・テレコム総裁に抜てきされた。それ以前は流通大手カルフール社長、そして公共職業安定所局長も務めている。97年、グローバリゼーションの波にのってボン総裁が挑んだのは、欧州市場への進出だった。
まず、EU諸国のなかで政治的にもいちばん親密な関係にあるドイツのドイツ・テレコムと組むこと。ボン総裁はこの提携により欧州市場の10%の獲得を目指した。ところがドイツ側はフランス側に知らせずに伊テレコムと合併。もともと相性の悪かった仏独総裁同士、ドイツとイタリアの「不倫」がもとで仏テレコムと 独テレコムの提携は「離婚」に終わった。
99年当時、携帯ItinerisとインターネットWanadooがヒットし、仏テレコム株の高騰にも気をよくしたボン総裁は、野望あらたに欧州の市場競争に立ち向かうため数カ国の企業の買収戦略に突入。それもバブル時期のピークの買い値で、英米系ケーブル会社 NTL、英国系携帯電話Orange、ドイツ系携帯電話 MobilCom、ポーランド元国営電話 TPSAと次つぎに買収していき、投資額は総額600億eurosに達する。
同時に仏テレコム株も上がるいっぽう。2000年3月には最高219euros(97年公開価格27.5euros) にまで奔騰。が、膨らみきったバブルは2001年初頭にはじけ、同年3月には50%減の100eurosに、今年6月には底をつき9eurosにまで暴落。9月12日現在10.63eurosに。
難破船、仏テレコムには約300万人の一般投資家と、公開時に株を購入した9割近い社員たちも同船している。社員らは株暴落で投資額の大半を失ったうえ、はたしていままでどおり公務員でいつづけられるのか不安はつのるばかり。
前ジョスパン政府は、外国系企業の買収戦略はグローバリゼーション時代の仏経済発展のためと独走した、ボン総裁のなすがままにさせていたのでは。そして今年に入ってからは大統領選、総選挙にかまけ、仏テレコムの財政危機に介入するひまもなく、半民営化された企業の内情まで監視することもしなかったのでは。
ラファラン内閣は瀕死状態にある仏テレコムにどういう手立てをほどこすか。株の暴落がつづくであろう母屋に焼け石に水式に100~150億eurosの増資? 国が負債額を肩代わり ? どちらにしても国民の懐から金が出るのには変わりない。
それだけではない、仏テレコムが28.5%の株を所有し、社員5000人を有する独MobilComも破産寸前。ドイツ政府が黙ってるはずがなく、財政上の決着だけではすまないはずだ。(君)
フランス・テレコムの主要部門
46% 国内電話通信
30% 携帯電話 Orange
15% 国外電話通信
4% インターネット Wanadoo
211 554人 社員数 (2001年末)
(*Libération : 02/9/13)