●Philippe Sollers《Mysterieux Mozart》 このソレルスの新作は、モーツァルトの生涯をフィクションとした小説ではなく、モーツァルトの伝記でもエッセーでも解説書でもない。様々な作家、画家、音楽家などを扱った『La Guerre du gout』(Gallimard, 1994: folio n。2880)においてすでに明らかであった「百科全書(…)主義(?)」。2000年に出版された『Divine Comedie』に続いて、モーツァルトに割かれた本作品は、この百科全書家ソレルスの活動の一環といえる。 この21世紀の百科全書派のターゲットは思想ではなく、嗜好(le gout)。つまり、モーツァルトのソレルス流(!?)、ソレルス節(!?!?!)入門や理解、解説を本書から期待してはいけない、二の次だ。Jazzyという音楽的隠喩で形容されるソレルスのエクリチュールはむしろ、モーツァルトのピアノを彷彿させる。言葉と言説のリズミカルな不連続性。本書は、読者をモーツァルトの音楽へ誘う。 その音楽とは? 重さと表面性(lourdeur et superficialite)に対立する深淵と軽さ(profondeur et legerete)の音楽。それがなくては生が生ではありえない音楽。とだえることのない「時」と「存在」の音楽。 18世紀末、そして響きと怒り(le bruit et la fureur / The Sound and the Fury)が溢れる現代、モーツァルトへの嗜好を語ること、そしてその嗜好を持つことには、きっと意味がある。 Et la musique ! s’il vous plait !(樫) |
Plon, 2001, 254 p., 18,40 euros (120,70 f) |