子供の頃、自宅の裏がピアノ教室だったという永田美樹さん。ピアノに触りたかったけど「幼稚園に入ったらおいで」と言われ、幼稚園入学式の当日自らピアノ教室の門を叩いていた。 中学生の頃にプロになることを意識し、高校、大学時代もピアノ一筋。大学卒業後は友人とサルサバンド活動、テレビ局の音楽製作、子供向けの楽譜のアレンジ編曲、ホテルやイベントでの演奏など、多方面から音楽に関わった。 やがて師匠にフランス行きを勧められる。多様なジャンルの音楽に関わった後で、あらためてラフマニノフ、ドビュッシーらの作品の持つ旋律の美しさに、新鮮な驚きを感じていた頃だった。「クラシックをまたきちんと勉強してみたい」。そして97年、美樹さんはパリのエコールノルマル音楽学院に入学した。 日本ではショパンの旋律のロマンチックな部分を強調しがちであるところを、フランスでは「ショパンの音楽に余計な飾り立ては必要ない」と教えられ、以後楽譜の見方そのものが変わった。パリの街を見渡せば、人も建物も余計な装飾に頼ることなく、本来の美しさを讃え輝いていた。「フランスで音楽を勉強するとはこういうことなのかもしれない」。音楽以外のことも学んだ留学時代。持ち前の頑張りで、教授科特別コースを、満場一致の一位で卒業する。 さて現在美樹さんは、日本大使館やフランスの協会・企業後援のコンサート活動に忙しい日々。こうやって活動ができるのも、やはり “人の縁” のおかげだとか。だがその一方で、「日本の企業は有名な芸術家の支援には積極的でも、フランスのように新しい人を支援する意欲が薄いのが残念で」と本音もチラリ。これは美樹さんだけでなく、フランスで頑張る不特定多数の日本人芸術家たちの、心のつぶやきなのだろうか?(瑞)
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*美樹さんの在スイス日本領事館後援のコンサートは11月8日/20h Salle Frank Martin du College Calvin 3 rue de la Ballee 1204 Geneve |