現在世界的に問題になっている狂牛病(正式には牛海綿状脳症 BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)が今後どのように流行するのかは、ほとんど予想がつかない (1)。人間への被害規模の拡大が懸念される一方、フランスでは最近ペット動物への伝染が心配されはじめている。
5月6日付「ジュルナル・ド・ディマンシュ」紙は、ペットフードへの骨肉粉の使用を規制あるいは全面禁止する措置が現在検討されていると報じた。狂牛病は犬や猫にも感染するのだろうか。
従来、狂牛病は、牛、羊、ヤギ類のみに感染する病気だと考えられていた。しかし、1990年、英国の動物園で骨肉粉飼料を与えられていたライオン、トラ、ピューマ、チーターなどのネコ科の肉食動物やレイヨウなどの草食動物までもが感染していたことが明らかになっている。さらに狂牛病の一種にかかっているとみられる飼い猫が発見され、ペット動物にも感染する恐れがあることがはっきりした。この事実は英国民を大きな不安に陥れているが、政府は、1996年8月、すべての動物に対し骨肉粉の使用を禁止する措置をとった。以後、英国、ノルウェー、リヒテンシュタインで約100件の猫への感染が報告されている。
英国、スイスをはじめヨーロッパの数カ国ではすでにペットフードの原材料の見直しがなされているが、フランス衛生局は、これまで愛玩動物への感染について何も言及しておらず、措置の遅れに非難の声が上がりつつある。この国では、実に800万匹の犬と900万匹の猫が飼われているというのに。また、忘れてはならないのは、フランスにおいてペットフードは、缶詰、乾燥フードともにそのほとんどが屠殺場の廃棄物および骨肉粉を使用して作られているということだ。骨肉粉の原材料としては、牛、羊、ヤギ、豚、鶏をはじめ、路上で見つかる野性動物や犬、猫などの死骸があげられる(2)。猫が猫を食べている? 背筋が寒くなるような事実ではないか。昨年まで飼料への骨肉粉の使用は、特に危険だとされる部分(牛の脳・骨髄)を含め全面的に認められていた。だが、政府はやっと重い腰をあげ、昨年11月14日付の法令で、ペットフードの原材料としての骨肉粉の使用は、精肉の廃棄物のみで作られたものに限定するという措置を決定した。
しかし、果たしてこの措置だけで私たちの大切な仲間であるペットたちの健康を守ることができるのだろうか。犬や猫用のペットフードに何が使われているのかはっきりしないことも多い (3)。昔はペットたちも、残り物とはいえ人間と同じ物を食べていた。彼らが何を食べたかはっきりしていたし、それなりに栄養のバランスもとれていたはず。一体いつから私たちはわざわざ高いお金を払ってペットフードなるわけのわからぬものを買い与えるようになったのだろうか。人間の食生活の見直しとともにペットの餌のあり方も考え直さなければいけない時期に来ているといっていいだろう。
(C. ボニエ / 船越規子)
(1) 狂牛病に関しては460号、469号、471号を参照。
(2) 動物病院で回収される死骸は使われなくなった。
(3) www.mlink.net/~cd/francais/を参照。