ラップシンガーのモハメッド・ディア君。パリ郊外の町、サルセル出身のマリ人で26歳。ラコステのワニマークを自分の洋服にくっつけてワニブランドにしてしまうような洋服大好き少年だった彼だが、2年前から自分のブランドを持つようになった。
リーバイスをフランスで最初に販売したB・ジョブロンスキーがバックについている。売れっ子ラッパー仲間がDIAと大きくロゴの入ったトレーナーや「必勝」と前身ごろいっぱいに大きく編み込まれたセーターを着て歌うようになると、それはたちまち少年少女たちの心を捕えてしまった。こんなディア君のサクセス・ストーリーは今やテレビでもお馴染みだ。彼はある雑誌のインタビューで「人気があるものだからコピーされる。コピーされるようになりたい」と言っていた。ここのところ若者の服に漢字が氾濫しているのは彼の影響なのか?
蚤の市。漢字風ロゴの入ったシャツを着るお兄さんは「ドラゴンの図柄は2年位、漢字は1年位前から多く出回ってる。ドラゴンと漢字の組み合わせは今年になってからかな。竜年の影響かな」。”東京製” と大きく書かれたジャケットとズボンを見に来た親子。少年は「3カ月位前からリセで見かけるようになって欲しくなった」と言う。店員さんはといえば “東京製” の意味を知り「卸の人は “あなたといつも一緒” って意味だって言ってたのに」と驚いた。ディア君よりも先にイギリスのブランド「マハリシ」は、カタカナのブランド名とドラゴンの図柄をスカートやズボンの裾に刺繍していた (しかし値段は蚤の市で売っている物の5倍から10倍くらい高いのだ)。このような漢字が米国や英国から渡来したと唱える人がいるのもこんな事情があるわけだ。(美)
今や人気ブランドになった “M.Dia”。
トレードマーク「必勝」入りのセーターを着たデザイナー、ディア君。