「息の上で寝る男」。ゴム製マットレスを膨らますカーティスを見て、ホピ族のインディアンが付けた名前だ。彼は1900年から30年かけて”The North American Indian”という百科事典を編纂した写真家である。この事典は北はアラスカ、南はメキシコ北部と、広範囲にわたる80部族のインディアンの各文化に関する資料と、写真2200点とからなるものだ。この展覧会ではここからセレクトした写真を数多く紹介している。 子供時代マニュアル書を片手にカメラをこしらえていたという早熟のカーティスは、独立スタジオを開業するやいなや、アンナ・パヴロヴァなど当時の有名人をクライアントに持つシアトルきっての売れっ子カメラマンになった。が、ふたりの民族学者との出会いでインディアン文化の虜になり、その後、彼の人生は一変してしまう。時に冷遇されてもインディアンたちの生活に入り込み、彼らの言葉でコミュニケートしつつ、あらゆる角度から研究し始めた。風習、労働、工芸、宗教、神話、医学、芸術、儀式、音楽、言語……。エジソン式シリンダーで録音した音楽を楽譜に起こすなど、カーティスのこの緻密で壮大な試みは、予算100,000ドルを遥かに超えて15倍の費用がかかってしまったという。当初はアメリカ中で話題に上ったこのプロジェクトには、ルーズベルト大統領の援助や多くの寄付金が集まったが、時と共に人々から忘れられてしまう。しかし、妻にも去られ、自分自身の健康を害しながらも、ついに1930年、全20巻を完成させた。 理想像に近付けるために画面修正していたことが批判されることはあっても、 長年の歳月をかけ、真摯に撮り続けてきたカーティスの写真は永遠性を持っている。従来より色に深さや透明感を出そうと、カーティスが開発した金色調のプリントが美しい。(ヤン/訳 : 仙) 12/31日迄 *L’indien d’Amerique du nord : Hotel de Sully : 62 rue St-Antoine 4e (月休) |
荒木経惟展 「写真は量を見せなくちゃいけない。それを並べたときにもうひとつの宇宙になると思うから、枚数は多ければ多いほどいい」 東京、雑踏、湿った空気、男と女、セックス、空、花…瞬間ごとに変化する被写体の様々な面を切り取る大量の写真。写真はアラーキーにとって空間を撮るというよりも、移ろい行く「時」を捉えるものなのだという。 彼の仕事を最も端的に表わすのは、妻陽子さんとの新婚旅行記「センチメンタルジャーニー」と、その陽子さんの死の前後を綴る「冬の旅」シリーズである。ごく私的な出来事の一コマ一コマが、私たちの思い出を引っぱり出す。生きるということ、そしてその先に待つ死。陽子さんの死は、彼に「死」の身近さと「生」へ向かうエネルギーをより強く意識させたのだという。 まるで生の頂点のように鮮やかな花の作品には女性性器が浮き上がる。そこへ戻ろうとする子宮回帰の欲望、同時にそれは確実に枯れるのだという死の予感。また、生々しい色のポラロイドの中にうごめく被写体たちは、写真という死んだ瞬間になるものかと叫んでいるかのようだ。過激な性表現であまりにも有名になってしまったアラーキーだが、作品に混在する生・性・死が諸行無常を語るところが人を惹き付けるのだろうか。(仙) *Centre National de la Photographie : |
|
|
|
mois de la photo 2年に1度のパリ写真月間が、今年で20年目を迎えた。優れた写真にまとめて出会えるチャンス、写真三昧の11月。 ●HIRO 1930年上海に生まれ、50年代に渡米。アヴェドンのアシスタントを勤めたのち、ハーパース・バザー誌を中心に活躍してきた日本人写真家ヒロの作品。11/5迄 Maison Europeenne de la Photographie: 5-7 rue de Fourcy 4e (月火休) ●<Mythes, reves, et realite dans la photographie argentine contemporaine> アルゼンチンの11人の現代写真家がブエノスアイレスの現実を伝える。11/7~1/5 Maison de l’Amerique Latine : 217 bd St-Germain 7e (日休) ●<Le plus beau jour de ma jeunesse> モロッコ、日本、キューバ、カンボジアなど、世界中を旅して撮影したBernard Faucon の、青春時代の忘れ難い思い出をイメージした350点。11/5迄 Maison Europeenne de la Photographie : 5-7 rue de Fourcy 4e (月火休) ●Raymond DEPARDON 報道写真エージェンシー、マグナムのメンバーDepardonの写真とフィルム。 11/15~2/4 Maison Europeenne de la Photographie : 5-7 rue de Fourcy 4e (月火休) 今年のメインテーマは「パリ」。写真が発明された19世紀から今日まで、写真に焼き付けられたさまざまなパリ… |
|
●<Paris sans quitter ma fenetre> Willy Ronis, Sarah Moon, 田原桂一などによる、窓から見たパリ。11/5~12/5 Galerie Camera Obscura: 12 rue Ernest Cresson 14e (日月休) |