Grondin au beurre blanc
ブール・ブランbeurre blancは、ベアルネーズ・ソースに卵を入れ忘れた失敗ソースがたまたま好評だったというのがはじまり。現在はナント市とアンジュー市の間で元祖争いが繰り広げられるほどで、魚料理の代表的なソースのひとつです。酸味がよくきいたバターの風味は、ペルシュやブロシェといった川魚、あるいは真ダラや舌ヒラメなど、淡泊な白身の魚にぴったり。
きょうは、安くて、そのうえ今卵を持っていることが多いホウボウを4人分として1キロ半 (キロ25F前後) 買ってきた。さばきやすい大きめのホウボウならちょうど4尾になるでしょう。これを三枚におろす。皮をとるかどうかは好みです。
ここでブール・ブラン作り。まずエシャロット6~8個をみじんに切る。鍋に辛口の白ワインとワインビネガーを160ccずつとる。僕は、酸味がキリッとした、色つきアルコールビネガーvinaigre d’alcool coloreを使うことが多い。ここへエシャロットを加え、弱火で煮詰めていきます。水分が大サジ2杯分ほどになったら、水を大サジ2杯足す。ここで、細かく切って冷たくしておいたバター200グラムを、泡立て器で素早く混ぜ合わせながら、何回かに分けて加えていく。相変わらず弱火。トロリとなったら火から下ろし、塩と多めののコショウで味を調える。湯せんにでもかけて冷めないようにしておきます。なお、バターが冷たくないとソースがトロリとなりません。
ホウボウのおろし身に塩、コショウ。フライパンにオリーブ油をとって、皮の側からソテー。もう片面もソテーして火が通ったら、お皿にブール・ブランを敷いて盛り付ける。 最後に魚の上にパセリとコリアンダーの葉をきざんだものをたっぷりと散らせばでき上がり。
バターの量をおさえ、かわりに生クリームを加えたブール・ブランのファンも多い。 ワインはムスカデのようなごく辛口の白がいい。(真)
●ホウボウgrondin
ホウボウ君は頭でっかち骨太なので、50%くらいがアラです。でもこのアラで素晴らしい魚のスープができるから、自然は偉大。和風に潮汁もうまい。まず頭を切り落としてから、ハラワタをとりのぞくが、このとき肝や卵を破らないように取りだして大切に保存すること。さっと洗ってから三枚におろし、図のように入っている中骨を、切っ先鋭い包丁で切り出す。
肝や卵は冷水でさっと洗ってから水気をぬぐって、塩、コショウ。小麦粉をまぶして揚げましょう。レモンを絞りかければ、最高に贅沢なオツマミ。
●コック貝のブール・ブラン
繊細なうま味のコック貝coqueをブール・ブランで和えたcoques au beurre blancもうまい。貝は4人分として1キロ半買ってくる。ノルマンディーやピカルディー地方の砂地に生息する貝だから、海水よりやや甘い塩水に12時間ほど漬けて砂をはかせましょう。途中で一度水を替えたり、暑いときは氷を入れて水の温度を下げる努力を忘れないこと。
大きめの鍋にバターを大サジ1 杯加え、みじん切りにしておいたエシャロット2個を加える。エシャロットが透明になったら、水を切ったコック貝を入れ、フタをして数分。一度大きく混ぜ合わせ、貝が口を開けてきたら即座にブール・ブラン (今回のレシピの半量) を加えて混ぜ合わせればでき上がり。パセリをたっぷり散らして食卓へドーンと出しましょう。万が一残ったら、パスタに加えれば最高だけれど、残りませんネ。
●台所のフランス語|monter au beurre
monter en neigeとあったら、卵白を泡立て器やミキサーでかき立てて空気を含ませ泡雪状にすることだったが、今度のブール・ブランのようにバターの小片を少しずつ、泡立て器で混ぜ合わせながら加えて、なめらかなソースに仕上げることはmonter au beurre という。卵黄に油を垂らしながら混ぜ合わせてマヨネーズを作ることはmonter une mayonnaise。