世界をいかに掴むか? そもそも世界とはいったい何なのか? 世界とは掴めるものなのか? アーティストたちは現実の世界をどのように見、観察し、空想し、作品化するのか? ミレニアムを記念して、市立近代美術館が全館を開放し、秋まで続く大規模な現代美術展だ。ボルタンスキーとラヴィエを顧問役に、フィリウー、ゴンザレス・トーレス、そしてサンダーの仕事からキーワードが立てられた。「目録」、「特異性」、そして「私と他者」である。それは20世紀をどのようにとらえるか、という問いでもある。 入り口の前には、ゴンザレス・トーレスの「無題(拳銃による死)」が無造作に置かれた。これは拳銃によって殺された人々の肖像と死んだ経緯が書いてある一種のポスターである。導入部は、フィリユーのランダムに投げられた5000個のそれぞれ色も大きさも異なった賽子の作品「Ein, Un, One…」、そしてボルタンスキーの電話帳の書庫から始まる。 今日の世界は、知の集積、記憶の集積となり(「目録」)、また「他者性」が問題の核心に位置するようになる。なぜなら、知が膨大になっても、「特異性」が語られるのは、世界がむしろ画一化に向かい、他者が排除されようとしているからである。 記憶と歴史の問題。ボルタンスキーやアッケルマンのような作家の営みは、ユダヤ系である自らの出自を辿りながら、その歴史が限りなく断絶されたもの、溝が穿たれた非連続の歴史であることを凝視するところに、起点がある。 G・フリードマンは骨を貼った万華鏡のボックスに訪問者を導き入れ、人間存在は視覚的幻想ではないかと問う。こうして60名ほどの作家たちの展覧は、今日の世界のヴィジョンの取っ掛かり(断片)を与えてくれるだろう。(kolin) *パリ市立近代美術館:10月29日迄 (月休) |
グロリア・フリードマン「鏡・骨」2000 Photo : A. Morin (DAGP) |
Atget, le pionnier
小道、階段の欄干、朝の公園。人影のないアジェの記録したパリ。死後シュールレアリストに影響を与えた彼の写真と、彼以降の写真家の作品を並示する。 1857年生まれ。俳優志望で20代にはパリ国立高等演劇学校に学ぶが断念。その後31歳で「芸術家のための資料写真」専門の写真家として独立した。高い技術で、当時一流の画家たちをクライアントにもち、オスマン都市計画のあと過去のパリを懐かしがる人々にはコレクションされ、国立図書館やパリ歴史図書館は彼の全作品を買い上げた。 1897年からは20テーマを新たに設け、「記録」を充実させていく。それと同時に、彼の視点は徐々に変化していった。特に1912~22年の仕事では、影を集めたり、思いがけぬフレーミングを試みたりと、現実とは別世界のような集積された空間は、「記録写真」でありながら、その枠組みからは解放されている。亡くなる前年、1926年発行の “la R思olution Surr斬liste” に名もなく掲載されたアジェの写真に、青年マン・レイは深く感銘を受けた。 感情を排除した彼のコンセプチュアルな「記録写真」が現代アートに与えた影響は確かだが、芸術家と呼ばれるのを拒否した彼にとっては、それはどうでもよいことなのかもしれない。(仙) *H冲el Sully : 62 rue Saint-Antoine 4e 9/17日迄(月休) |
●Robert DOINEAU <Gravite>
ドワノーはパリの街角の幸せだけを追っていたわけではない。容赦なく訪れる悲しみ、でも人生は続く。同タイトルの写真集発刊に合わせた展覧会。7/15迄 Galerie Fait & Cause: 58 rue Quincampoix 4e ●Pierre PAULIN 1960~70年代、ポンピドゥ大統領からの依頼でエリゼ宮の家具のデザインをした。実験的で超モダンなポランの家具展。7/29迄 Galerie Alain Gutharc: 47 rue de Lappe 11e ●Alexander CALDER (1898-1976) モビールを初め、油彩画やデッサンなども展示。7/31迄 Darga & Lansberg Galerie:36 rue de Seine 6e ギャラリーを持ち、アートフェスティバルのメセナにも名を連ねるアニエスb.のフォトコレクション。8/21迄 Centre national de la photographie: 11 rue Berryer 8e ●Martin PARR そのアニエスb.ギャラリーでは、イギリス人フォトグラファー、マーティン・パーの作品を展示。オートポートレートと花。6/28~ 44 rue Quincampoix 4e ●Jacques VILLEGLE & Pierre HENRY 221 av. Jean-Jaur峻 19e (月休) ●Michel GOULET カナダ人。現実世界をばらばらにし、ビデオ、音楽など、さまざまなメディアで再構成したハイブリッド・インスタレーション。9/20迄 Centre culturel canadien: 5 rue de Constantine 7e ●NILS-UDO (1937-) 草の壁に囲まれた空間が、束の間の建造物に。刻々と変化する植物を素材にした作品。9/24迄 ●<Picasso Sculpteur> ピカソの立体作品300点を一堂に。鉄板、釘、コラージュ…、伝統的な彫刻の素材や技法とはまったく違う視点で広げられる、ピカソの生の世界。9/25迄 ポンピドゥセンター (火休) |
●<Le Desert>
<砂漠>をテーマに集められた、19世紀から現代までの22人の作家の写真、映像と、現代アーティスト10人によるエキスポのために制作されたの砂漠のイメージ。11/5迄 カルチェ財団: 261 bd. Raspail 14e (月休) <もうすぐバカンス。地方での展覧会> ●Massimo VITALI 夏の海辺、明るい太陽の下のバカンスシーズンの人々。大画面に引き伸ばされたカラー写真にうごめく大衆。10/8迄 236 bd Leclerc 83000 Toulon(月休) ●Geer van VELDE(1898-1977) 1925年、画家の兄ブラムのあとを追うようにオランダからフランスへ移り住む。抽象的な形体と静かな色のハーモニー。10/29迄 ●Pierre BONNARD (1867-1947) 豊かな色彩で生活の情景を描いたボナールの回顧展。10/9迄 (火休) 1 rue d’Unterlinden 68000 Colmar |