奥山さんの毎日が、にわかに慌ただしくなってきた。セーヌ川で《浮かぶ時Heures Flottantes》という「灯籠流し」を計画中で、その実現のために人に会うことが多くなったからだ。時計をイメージして奥山さんが作る一つ一つの灯籠《浮かぶ時 Heure Flottante》は、水に浮かんだ姿が睡蓮の花を連想させる幻想的なオブジェだ。参加者はこのなかに「流したいと思う時」を託し、灯を点して水に放つ。参加者が300人なら300、1000人なら1000の灯りが、ゆったりとセーヌの川面を流れる光景…。参加者たちが託すありったけの「時」が川面を流れ、灯りが消えるまでの束の間の時間…などを多くの人と共有したいと願って奔走する日々だ。
草の根運動的に計画を実現させたいと思い、近所の住人や商店の人たちに説明し参加希望者に署名してもらった。地方や郊外での個展の時はそこでも署名をしてもらう。署名は日付、時間を伴っていて、作品/イベント《浮かぶ時》を構成する要素になる。「ようやく200人を超える賛同者を得た」と喜ぶ奥山さん、それを機に役所との交渉を始めた。「私が無名の美術家だから官僚の反応は様々。でもこうしたことも記録に残し、ドキュメント “作品” とします」。7人の核になるフランス人賛同者が積極的に手伝っている。
パリに仕事で来てから美術に目覚め、1971年よりフランスに定住。独学で美術の基礎を学んだ。ポンピドゥー・センターやアザン出版社の子供向け美術書の編集、美術批評などに7年間携わった後、創作活動に復帰。
《浮かぶ時》は大がかりなイベント/作品だけれど、その実現後もまた「時」をテーマにした大がかりな「実現できたら死んでもいい!」と思うような目標が待っている。(美)
*毎週土曜日14h30~18hにバスチーユ近くのアトリエでプロジェクトの説明がある。電話で確認して(01.4333.4408)
4 rue Basfroi 11e へ。
*《Heures Flottantes 浮かぶ時》計画を展示。Galerie Sculptures : 11 rue Visconti 6e 01.4634.1375
5月23日 (ベルニサージュ) ~6月10日