●Murmures「ナヌムの家」
ソウル日本大使館前の100回目のデモから映画は始まる。そこに集まる10数人のハルモニ (お婆ちゃん) たちは、第二次世界大戦中に日本軍の性奴隷にされた犠牲者たちだ。
画面はそこから一転して、彼女達が共同生活をしている「ナヌム」(分かち合い) の家での淡々とした日常生活をつづる。また、中国に取り残された3人の犠牲者の痛切なシーン。彼女達のつぶやきのような問いかけが、戦争の記憶と責任についての私たち日本人の応答能力を問うている。50年間の沈黙を破ってカミングアウトさせた原因は何だったのか。ビヨン・ヨンジュ監督が95年、30歳で撮影した渾身のドキュメンタリー。日本人必見。
26日/20h 国際女性映画祭特別上映
*Maison des Arts:Place Salvador Allende, Creteil M!Creteil – Prefectur 上映後討論。
27日/18h
*パリ韓国文化センター:2 av. d’Iena 16e*
●En face
これは題して「ふれんちさすぺんす」映画だ。へたな「人間的」メッセージ、こった美的映像、派手なアクションにたよらず、純粋にストーリーをみせるには、サスペンスというジャンルほど適したものはない。パリ18区、モンマルトル、つき合いのない老人の遺言でその大邸宅を相続する夫婦という設定で始まり、最低限の登場人物で謎解きの緊張は最後まで保たれ、「どんでんがえし」は見事にきまり、あっといわせるものがある。俳優陣も、『ベティー・ブルー』以来ついに作家の道を歩み始めるジャン=ユーグ・アングラード、ドワイヨンの『ピストルと少年』でデビュー以来、若手のフランス女優としてはいまいちぱっとしないながらも、おそらく最多の出演数をもつ(4/5日には奇才ドニ・ラバンも登場のフランス版『スクリーム』”Promenons-nous dans les bois” が公開される)、クロチルド・クローがいい味を出して、よくできたドラマ=映画に仕上がっている。(岳)
●ロベール・ブレッソン特集
2000年を待たず、去年の暮れに99歳で世を去ったブレッソンの特集を首を長くして待っていたら、5区のReflet Medicisと6区のArlequinで3月15日から始まる、という吉報。日替わりで全14作品が公開され、作品や監督自身についての討論会なども用意されている。『抵抗』や『白夜』など、あまり映画館にかからない作品を見るいい機会。4月18日まで。