バスティーユ広場から目と鼻の先。給仕担当のムッシューが、ラララーと鼻歌を歌いながら陽気に仕事をしているのが、いかにも下町のビストロといった雰囲気だ。
静かな通りにあるが、食事時ともなれば常連客が次々と現れる。何も言わなくても「ああ、おいしいものが大好きなんだな」と分かる体型のシェフ、クリストフさんといい、店頭とメニューの冒頭にCuisine de Franceと掲げる姿勢といい、食べる前から、ここは絶対においしいだろうと確信してしまった。しかも、フランス料理店はこぞって店を閉めてしまう、土日や月曜もオープンしている。
昼なら前菜+メイン、もしくはメイン+デザートで19€、3品で22€のコースがあるので、気軽に試すことができる。 前菜には、メニューを見た時から決めていた、ラング・ド・ヴォーのカルパッチョをとってみた。子牛のタンをどう料理するのか興味津々だったが、実に繊細で、「これ舌だよ」と教えてもらわなければ、分かる人は少ないだろうと思う。
メインはヤリイカのソテー。火加減の難しいイカを、表面はカリッと、しかも火を通しすぎずに柔らかく仕上げていることに拍手。粗挽きのコショウがアクセントになっているのだが、このコショウ、よくみると小さな粒に軸がついたままの流れ星のような形。おそらくマダガスカル産ではないかと推察するが、こうした細部へのこだわりがおいしさにつながっているのだと納得です。付け合わせのビーツは赤紫と黄色の二種で、見た目にも鮮やか。優しい甘みと、根菜特有の土っぽい味が、しみじみとおいしい。
隣のテーブルでは、通らしい年配のムッシューが、ブルターニュ産オマールのロースト(16€)と、船に見立てた舌平目のロースト(30€)を粋に食べていてほれぼれした。他にも、シャラン産の鴨やアルデュード産の豚、大ぶりのリ・ド・ヴォーや2人前のフォーフィレなど、上質な材料を使い、シンプルに仕上げた豪快なフランス料理が味わえる。ナチュラルワインとともに楽しめるので、季節ごとに訪れたい。(里)
Amarante
Adresse : 4 rue Biscornet, 75012 Paris , FranceTEL : 09.5080.9380
アクセス : M° Bastille
水・木休み 12h30-14h/19h30-22h