Mannequin d’artiste, Mannequin fétiche展
ロダンの弟子、ジャコメッティの師匠でもあった彫刻家アントワーヌ・ブールデル。彼の自宅兼アトリエが保存されたブールデル美術館が、改修工事を経て8カ月ぶりに再オープンを果たした。目下、芸術家の思い出が溶け込む静謐(せいひつ)な空間にふさわしい展覧会が開催中だ。アンティークのマネキンを中心に、絵画やデッサン、写真、フィルムなど160作品を集め、ルネサンス期以降の「芸術家とマネキン」の親密な関係を紐(ひも)解いてゆく。
マネキンは15世紀頃から、芸術家にとって「人間をより上手く描く」ための大事な道具。当初は人間の代品に過ぎなかったが、時代とともに様々な角度から芸術家にインスパイアを与えるように。そして20世紀にはキリコの絵のように、しっかりと主役の座を奪ってしまうのだ。その緩やかな反転の歴史が興味深い。ケンブリッジ大学内のフィッツウィリアム美術館との共催だが、コンセプトも明快で、親子でたくさんの「なるほど」に出会えるだろう。
人形の一種であるマネキンは子供にとって身近な存在。だが、「ワタシ、可愛いでしょ?」と媚を売ってくる現代のお人形とは異質の表情を浮かべる古いマネキンは新鮮だ。例えば、イタリアの美術学校の依頼で制作された200年前の木のマネキン。デッサン用のモデルとして無数の視線に晒(さら)されてきた、ちょっとビックリ顔の美青年である。ピノキオ的悲哀を封じ込めたこの美しい作品の作者が「不明」というのも、想像をかきたてる。
春の陽光が一段と気持ち良い季節。町の喧騒を忘れられるモンパルナスの隠れ家的ミュゼに、子供の手を引き出かけてみてはいかがだろう。(瑞)
Le Musée Bourdelle
Mannequin d’artiste, Mannequin fétiche
(2015年7月12日迄)
16-18 rue Antoine Bourdelle 15e
M° Montparnasse – Bienvenüe, Falguière
01.4954.7373
9€/6€
火~日 10h-18h、月・祝日休み
www.bourdelle.paris.fr