先日魚屋に、40センチくらいの大きなホウボウが並んでいる。名前はなんと「tombe(お墓)」。「毒でもあるんですか」と、魚屋に冗談半分にたずねてみたら、「そんなことはないけれど、なんでお墓なんだろう」と彼も首をかしげてしまった。一尾800グラム近くあったが、頭がばかでかいので、4人分で2尾、ハラワタをとってもらってから持ち帰った。
知らない魚はまず生で味わいたい、とほんのちょっと刺身にしたら、脂がのった白身でうまいことうまいこと! 残りは、頭ごとオーブンで焼くことにした。
火が通りやすいように、背中に深い切れ目を一つ入れてから、オーブン皿にとる。ハラワタがあった部分もふくめて、全体にオリーブ油とレモンの絞り汁をたっぷりと振りかけ、塩、コショウし、タイムの葉もまぶしつけ、30分ほど、味がしみるように放っておく。
オーブンの目盛りを200度に合わせ、それが熱くなったら魚を入れる。後でソースを作ることを考えてトマトを半分に切って、皮を上にして入れておくといい。味よく色よく焼き上がるように、オーブン皿の底にたまってくる油と焼き汁を、何回か魚の上からかける努力を怠らないようにしたい。魚の大きさ次第だが50分ほどで焼き上がる。
魚を焼いている間に、付け合わせのピラフを作ることにしたい(右欄参照)。さあ焼き上がった魚を熱くしておいた大皿に盛りつけ、さらに、アルミホイルをかぶせて冷めないようにしておく。柔らかくなっているトマトの皮をのぞいて押しつぶす。オーブン皿に白ワインを注ぎ、魚のうま味が溶け込んでいる煮汁、トマトと混ぜ合わせる。これをこして小鍋にとり、少し煮詰めたらパセリやセルフイユのみじん切りを加えればおいしいソース。
魚を、骨が入らないようにそれぞれの皿に取り分けてから、レモンとソースを添える。ピラフには、さっと炒めておいたマッシュルームを混ぜ入れることにした。ワインは南仏産のロゼが合うだろう。(真)
ホウボウ大2尾か小4尾、トマト2個、レモン1個、白ワイン1カップ、パセリ適量、オリーブ油、タイム、塩、コショウ
●grondin
日本ではホウボウと呼ばれているgrondin。腹部が平たいことからも想像できるように、水深100mから600mの水深の海の底に生息する魚。胸びれが太く発達していて、海の底を方々行ったり来たりするからホウボウという名前になったという説もある。さまざまな種類があり、地中海には飛びホウボウもいる。Tombeというのは、ノルマンディーでとれる大きめのホウボウのことだ。grondin という名前の由来は、釣り上げられると、浮き袋をふくらましてうなる(gronder)ような音を立てることから来ている.
その締まった白身はとてもうまいのに、キロ10€前後と安いのは、少々食べにくいからだろう。フランスでは、おろさずに、そのままオーブンで焼いたり、よくダシが出るのでスープ仕立てにすることがほとんどだ。日本では高級魚扱いで、刺身、塩焼き、煮付け、テンプラなどにされている。肝もとてもおいしいので、捨てたりしないで蒸したりして味わってくださいね。
●簡単ピラフ
ピラフというと、玉ネギやエシャロットを炒めてから、さらに、洗ってからパソワールにとって水気を切っておいた米も炒めてと、ちょっとだけ手間がかかる。そこで時間がない時は、簡単ピラフ。
米をといでからいつもの通りに水加減をするのだが、半分以上は鶏ガラのブイヨンにする。インスタントを使う時は、くどくならないように薄めです。ここへみじん切りにしたエシャロット2個を混ぜ入れ、ローリエの葉1枚、オリーブ油大さじ2杯も入れ、軽く塩加減をし、かき混ぜてから、いつものように炊くだけだ。バターライスにしたい時は、オリーブ油のかわりに、バター大さじ2杯です。
●bouillon de volaille
鶏ガラのブイヨンのキューブは、ちょっと味を補いたい時など重宝するが、使い過ぎは味がくどくなるので気をつけること。必ず、あらかじめ熱湯やスープなどでといてから使います。