南アフリカ人写真家ピーター・ヒューゴー (1976-) が、2006年から2013年までに撮った、アパルトヘイト廃止後の母国をテーマにした作品展。人種のるつぼ、経済格差、植民地主義などのテーマは、結婚して子どもができてから、より自分の問題として考えるようになったという。「この社会でどうやって生きていくか」「歴史的責任をどう背負っていくか」「摩擦の多い社会で、どうやって子どもを育てていくか」など。問題をいったん作者の腹の中に落とし、そこで消化させてから表現しているためか、南アフリカを撮っていても、ことさら社会的な主張を打ち出してはいない。見る者の肌の表皮がヒリヒリと焼かれていくような、観客を正面から見据えた肖像が印象的だ。オランダ絵画を思わせる静物写真も独特の雰囲気をたたえている。うつむき加減でポーズをとる作者の乳母の表情には人生の受容とあきらめが表れている。控えめだが品性のある肖像は、レンブラントの絵画を見ているかのようだ。4/26迄 月休。
Fondation Henri Cartier-Bresson :
2 impasse Lebouis 14e