移民規制法案を横目に、2007年にヴァンセンヌの森近くに誕生したのが移民歴史博物館。フランス移民史を網羅しているが、子供たちにはやや敷居が高い印象もある。ところが現在、「第9芸術」こと漫画が主役の展覧会を開催中。この機会に親子で足を運んでみよう。
登場する作家は120人。フランスだけでなく、全世界の移民作家による作品が集められている。3部構成で、第1部は有名作家の仕事に焦点を当てた「Bulles d’auteurs」。フランスの国民的漫画「アステリックス」でさえ、生みの親ルネ・ゴシニとアルベルト・ユデルゾは揃って外国人の血をひく! 第2部「Sur la planche」は、ジャンルやテクニックから移民漫画を読み解く。第3部「Travelling」は、時間軸から移民漫画の歴史をつかむ。前世紀初頭に米国に移住した日本人漫画家の作品もあり、興味深い。「Parcours Enfant」が用意されていて、子供用のクイズやゲーム、お絵描きができる。漫画は、移民の生活ぶりや感情のヒダまでも雄弁に表現できるユニバーサルな表現手段。フランスに滞在している日本人にも心に響く展覧会だろう。(瑞)
Musée de l’histoire de l’immigration :
293 av. Daumesnil 12e
01.5359.5860 M°Porte Dorée
www.histoire-immigration.fr
2014年4月27日まで。
火〜金10h-17h30、土日10h-19h。月休。6€。
アステリックス展
1959年の誕生から、全世界107語に翻訳され、3億5千万部を売り上げた「アステリックス」。フランス国立図書館Bnfで、作者アルベルト・ユデルゾから寄贈された貴重な原画を中心に、大規模な展覧会。11月の週末は、BnF脇にあるMK2 Bibliothèqueでアステリックスの映画が上映される。
Bnf : Quai François-Mauriac 13e
01.5379.5959 www.bnf.fr
2014年1月19日まで。火~土10h-19h、日13h-19h、月・祝休。7€/5€。
«Albums-bande dessinée et immigration»展で取りあげられた作家の作品から、博物館スタッフが推薦してくれた3作品を紹介。
①La Vie de Pahé
TVアニメの『Le monde de Pahé』の原作として広く知られる『La Vie de Pahé』。ガボンからパリ郊外の集合団地に移住してきたガボン人作家パエの自伝的BDだ。幼少時代のガボンでの生活、そして渡仏して雪やTVに驚き、イタリア、アルジェリア、ポーランドなど、国際色豊かな友だちに囲まれ過ごしたやんちゃな子供時代がイキイキと描かれる。小学生から。
②Là où vont nos pères
故郷に妻と娘を残しながら、いつか家族で暮らせる日を夢見て、ひとり海を渡る移民の男の物語がBDに。文字はなく、セピア調の繊細なイラストが続くという異色の構成だが、幻想的な世界が読者の想像力をかき立てる。マレーシアとアイルランドの血を引く作者のショーン・タンは、オーストラリアで活躍する移民3世。子供の好奇心に応じて、小学校高学年から親子で読んでみるとよさそう。
③Les Années Spoutnik
社会派&リアリストBDのパイオニアで、アングレーム漫画フェスティバルの常連バルも、やはりイタリア系の移民2世。この作品は、彼の故郷ロレーヌ地方が舞台の大作だ。労働者の町で育った彼の子供時代が色濃く反映され、『ボタン戦争』を思わす悪ガキたちの闘争も見どころ。東西冷戦下の50年代末、共産党員が力を持つ時代の空気も伝わる。中学生~。