レピュブリック広場のはずれにある、知らなければ見過ごしてしまいそうな小さな店。よく見ると、外観にははめ込まれたレンガの模様や石の装飾。なにやら不思議と気になる雰囲気に誘われて、 おそるおそる中に入ると、元気いっぱいのマダムが迎えてくれた。
ビストロ・カフェひと筋37年というマダムの話は片時も止まることなく、この界隈の事情や歴史、世界中のファンからの絵はがきのコレクションまで、僕たちにいろいろ教えてくれる。それでいてマダムの手はしっかり動いていて、さっとサングリアのアペリティフが運ばれ、サラミの盛り合わせも各人ひと皿ずつ出てきた。
マダムと二人三脚のシェフは元消防士さん。だから盛りつけの気前がいい。本日のメニュー(10€)は、羊の首肉の煮込み。お皿からはみ出すくらいなのに、「肉のお代わりあるからね!」。日本人だから、と少なめにしてくれたらしい。付け合わせのサラダもたっぷりで、どうもお代わりまでは必要なさそう。
パリのカフェで生まれ育ったマダムと、誠実そうなシェフはケチケチした感じが一切ない。結局食後酒までご馳走になり、すっかりこの店のサービスと料理に魅了されてしまった。はるばる遠くからつめかける人々や、近所の詩人やアーティストたちとの交流。人間味あふれる家庭的なビストロに、「パリらしさ」を発見。(高)
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〈ビストロ〉La Petite rose des sables
Adresse : 6 rue de Lancry, 75010 Paris , FranceTEL : 06.1889.4704
12h-15h、19h15-0h (要予約)。日休。