鳥肉屋やスーパーに、ふつうの若鶏pouletの半分くらいの大きさのひな鶏coqueletを売っている。一羽600グラム前後だから、ちょうど二人分くらい、カップルだけの時の食事に便利だし、その上、火がとおりやすいから短時間で調理できるのもいい。味が淡白すぎて、と避ける人も多いが、そんな人は、今回のレシピのように辛味をきかせたタレに漬けてからグリルするといい。昨年末ブリュッセルに行った時に、評判のカメルーンレストランで食べた一品です。
4人分としてひな鶏を2羽買うのだが、鳥肉屋に二つに割ってもらうといい。スーパーで買ったなら自分でやるしかない。でも骨が柔らかいのでそれほど難しくはない。首があったところにあいている穴から調理バサミを入れ、尻の部分までジョキジョキと二つに切り分ける。それをなるべく平らになるように、包丁の背で押しつぶす。
その西アフリカ風タレだが、ふつうのレモンではなくライムを使うと本格的になる。辛みは、本物の唐辛子をおろして入れるよりはタバスコソースの方が加減しやすい。たとえば、このタレを、ボウルにとったトリにかけまわし、少なくとも2時間はおいておきたい。
オーブンの目盛りを210度に合わせて点火。オーブンが熱くなったら、焦げないようにタレをぬぐったひな鶏を、皮でない方を上にしてグリルにのせ、中段に入れる。タレが流れ落ちてもいいように、その下に水を張った天板を置くことを忘れないように。時々タレをハケで塗りながら焼いていき、表面に軽く焼き色がついてきたら、今度は皮の方を上にする。こちら側にもタレを塗り、カリッと皮が焼き上がったらできあがりだ。焼き時間は合わせて25分くらい。オーブンがなかったらフライパンで焼きます。
付け合わせはごはんがいちばん。残ったタレも加えた辛いトマトソースを作って添えるといい。(真)
4人分:ひな鷄2羽 タレ:落花生油かヒマワリ油半カップ、ライム2個分の搾り汁、丁字2本(頭の丸い部分は指でつぶして粉にする)、
おろしたニンニク2片、唐辛子粉あるいはタバスコソース適量、しょう油少々、塩、コショウ
●ニワトリ
料理に使われるニワトリは、雄鶏coq、雌鶏poule、若鶏poulet、ひな鷄coqueletに分けられる。
雄鶏は、雌鶏に有精卵をうませ養鶏場の鶏数を増やすという重要な役目が数年間で終わったところで、食用にされるが、身は固い。ワインやビールで長時間煮込むと、深い味わいになる。残念ながら最近は鳥肉屋からも姿を消し、名高い伝統料理coq au vinに使われているのも、ほとんどが雌鶏。以前はフランス料理のレシピ本に雄鶏のトサカ料理が掲載されていたりしたが、これも姿を消した。
雌鶏は生後18カ月から2年のものが食用にされる。若鶏よりも一回り大きく、一羽2.5キロから3キロくらい。これも身が固いので、poule au potのごとくたくさんの野菜と一緒に水から煮込む料理に適している。
若鶏は、名前から想像できるように雌鶏の若いもの。生後1カ月半くらいの1キロくらいのものから、生後4カ月、2キロくらいのものまで、さまざまな大きさのものがある。1キロ半前後のものが、身も適度に締まっていておいしいものだ。〈Fermier 農家産〉や〈Label Rouge 赤ラベル〉と明記されているものは、飼料などを含め品質が保証されている。鳥肉屋では、頭や足がついたままで売っているので、作りたい料理向けにさばいてもらうが、レバーや砂肝も忘れずにもらって帰ること。若鶏は、ローストしたり、ソテーしたり、赤や白のワイン、あるいはシードルと煮込んだり、そのレシピの豊かさは食材のクイーン。
鳥肉屋では、レバーだけキロ10ユーロ前後で売っているが、これも見逃せない食材だ。スジをナイフで切り取ったら、バターなどでさっと炒めて塩、コショウ、レモンをしぼりかけて、生クリームで和える。うまい!
●salade de coquelet
二つに割ったひな鶏を大鍋にとり、水をひたひたに加える。人参の輪切り、セロリも加えたブーケ・ガルニも入れ、塩、コショウ、中火にかける。沸騰したらアクをとり、弱火にし、ふたをして30分煮たら火から下ろす。そのまま半日は待つ。鶏を取り出してむしれば、そのままいろんなサラダに加えることができる。ボクは、キュウリと一緒にゴマ油の風味を生かした中華風にする。