フランスの中学4年生(3ème)は毎年2月に2〜5日間程度、企業内で「スタージュ(研修)」をすることになっている。それを聞いたときは、「中学生がスタージュ?!」とびっくりしたが、中学生に企業社会を体験してもらおうという意図で2005年に全校に導入されたそうだ。
高校生の長男が中学4年生のとき、スタージュ先を探すようにという紙を学校から持って帰ったときは、とまどった。「ゲームショップとか、服のブティックとかやりたいことがある生徒は直接、店に言って頼んだりするらしい。あとは、親の会社とか親の知り合いの紹介とかが多いみたい…」らしく、自力で見つける以外は親のコネが大きく影響するようだ。
長男に何がやりたいかと聞くと、「わからない」という返事。何度か話し合ううちに、「音楽関係とかいいな」ということになり、ないコネを掘り起こし、主人の知り合いのそのまた知り合いに録音スタジオを紹介してもらった。「忙しいのでおかまいできないけど」となんとかOKの返事をもらい、初日は私が付いていって、よろしくお願いします、と預けてきた。スタージュが終わって話を聞いてみると、1回だけ機械をさわらせてもらっただけで、あとは横で見ていたという。会社の人も迷惑だろうし、こんなので社会勉強になるのかね、と首をひねった。
ネット新聞〈Rue89〉の2010年6月22日付に掲載された、パリ5区、ブルターニュ、パリ郊外サンドニそれぞれの、ある1クラスのスタージュ先リストを見ると、パリ5区は、出版社、銀行、研究所、弁護士事務所、映画会社、博物館、広告会社などホワイトカラーっぽい企業が並ぶ。ブルターニュの中学では郵便局、農業機械販売会社、農家、自動車修理会社、情報処理メンテ会社、パン屋など。サンドニでは、県庁、情報処理会社が1件ずつで、残りはスーパー、レストラン、ブティックなどのサービス業。なるほど…子供のスタージュ先はもろに親の社会階層を反映している。(し)