映画好きの友人と嘆き合った。「最近のフランス映画はつまんない」、「いつも同じ俳優、シナリオ重視、生きてない、な〜ぜ?」。こんな疑問を抱いている時に出会ったのが、現代フランス映画の社会学といってもいいこの新刊。林瑞絵はパリ在住のジャーナリスト。このオヴニーにも「映画」について書いてもらっている一人です。
著者は、製作本数が増えていて「表面的には健康体に見えるフランス映画も、(…)そこにうっすらと浮かび上がってくるのは、量産され続けるダメ映画の死骸たち」と手厳しい。その原因を①テレビ&映画、お見合い結婚の破綻②シネコンが後押しする数の論理③自己チュ〜な作家主義の蔓延④真のプロデューサーの不在⑤批評の不在、とし、細をうがった現場検証というか推理が展開されていく。
その辛口の語り口の面白いこと! どんどんページが進む。たとえば「フランスでは最近、『映画スターになりたければ演劇学校に行くのは無駄なこと。男はお笑いタレント、女はスーパーモデルになった方が早道さ』などと冗談を言う人がいますが、ほとんど冗談にもなっていない現状です」といった調子。あとは読んでのお楽しみ。デプレシャン、クラピッシュといった映画監督とのインタビューが、この一冊に深みを与えている。ブリュノ・デュモンも「パリジャンたちの会話に埋め尽くされて、自分自身ばかりに目が向いているような現代フランス映画というものが、全く理解できません」と語る。
そして著者は『レディ・チャタレー』という傑作を撮ったパスカル・フェランが提唱する「中間映画」などに、フランス映画好転の兆しを見ている。
とはいえ、映画はどこまでもアート。個の力がものをいう世界でもある。こんな厳しい映画界の実状の中でダルデンヌ兄弟は名作を撮り続けている。次回は、著者にそんな「個」についての辛口批評も期待したい。(真)