フランスの庶民たちを養ってきた国民食はポトフだというけれど、アイルランドの国民食は、何といってもアイリッシュシチューだろう。アイルランドといえば、青々とした草地が広がり、その自然の中で飼育されている羊たち。その羊の肉とジャガイモとタマネギをひたすら煮込んだシチューです。ジョン・フォードの名作『静かなる男』では、エキストラで出演している村人たちが実によかったけれど、そんな彼らが食べているような素朴な料理。心まで温かくなるような一品です。
参考にしたレシピでは、子羊agneauでなく、しっかりとした味の羊moutonとわざわざ断ってあるけれど、匂いが心配なボクは子羊の肩肉にし、肩甲骨paletteをとってもらった。これを小さめのぶつ切りにして、余分な脂を除く。この脂も本来はとらないと思うけれど、ついつい健康を考えてしまう。でもちょっとだらしないかな。ジャガイモは皮をむいてから、7ミリほどの厚さに輪切り。タマネギは薄くせん切り。
あまり大きくない厚鍋に、まず肉の半分の量を入れ、塩、コショウする。その上にやはりジャガイモ半量を鍋いっぱいに広げるように並べ、次はタマネギをやはり半量並べる。もう一度同じ作業を繰り返したら、ブーケガルニを加える。ボクはセロリの茎1本も結わえることにしている。ひたひたになるまで水を張るのだが、ボクはラガータイプのビールと半々にする。その方が甘みが少し出てうまいと思う。
鍋を中火にかけ、沸騰してきたら弱火にし、フタをして2時間半くらい煮込んでいく。タマネギの形がほとんどなくなって、ジャガイモがすっかり煮ほとびたような感じになったらでき上がりなのです。最後に塩とコショウで味を調える。
羊肉のうまみをたっぷり吸ったジャガイモのおいしさが格別。スプーンも添えて熱々を味わいたい。ワインは、ロワール産のナチュラルワインの赤があったら最高。ギネスにしたら、もうアイルランド人だ。(真)
材料(4人分):子羊の肩肉一つ、ジャガイモ1キロ、タマネギ1キロ、セロリ入りブーケガルニ、ビール適量、塩、コショウ