
パリからヴェルサイユへ、そしてさらに南西へとすすむと広大なランブイエの森がある。その一角に建つランブイエ城は、ヴェルサイユ宮殿のように大きくもなければ、派手でもない。富や権力を誇示する城とは違った、奥ゆかしい美しさをたたえている。
この城はまた、1975年にジスカール=デスタン大統領が第一回のG6首脳会議を開催したことでも知られる。今年再びフランス(エヴィアン)でG7首脳会議が行われたのを機に、その誕生の地となった城内に、G6の晩餐会のテーブルや、首脳たちが密やかに会話を交わしたサロン、日本の三木首相ほか首脳が滞在するために城内に整えられた部屋が再現された。G6生みの親・ジスカール=デスタン大統領がこの城を別荘としていたアパルトマンも再現され、これまで非公開だった部分が公開されるようになった。

ここに城が建てられたのは14世紀。18世紀には国王ルイ14世の息子ルイ=アレクサンドル(トゥールーズ伯)が城主となり、そのまた息子へと引き継がれた後、狩猟が好きだったルイ16世が城を買う。ナポレオン1世、3世の後、ランブイエ城は1883年、大統領府の狩猟地となる。
その後フェリックス・フォール大統領が夏の別荘とするなど、135年間、大統領府の領域だった。転機はサルコジ大統領。2007年に選出されると、ランブイエよりもヴェルサイユ庭園内にある、それまで首相の別荘だった 「ラ・ランテルヌ」亭を好み、公式の別荘とした。その後2018年、ランブイエ城は大統領の別荘ではなくなり、大統領の別荘だった部分が公開となったのだ。
アイゼンハワー、ケネディー、ブッシュ、ブレジネフ、ゴルバチョフほか数々の首脳を迎え、130もの国際会議が開かれた城では、外交の歴史にも触れられる。エリザベス女王や、明治天皇も訪れた。運がいい人なら、明治天皇が日本からこの城にもらたした、ある「贈り物」も、目にすることができるかもしれない。(集)
Château de Rambouillet
大統領の城、外交の城、ランブイエ。

ランブイエは、王政から帝政、そして共和制を通して元首の居城でありつづけたフランス唯一の城」と胸をはるのは、国立ランブイエ領地の総支配人、イザベル・ド・グルキュフさん。フランスでは多くの城がフランス革命後に荒廃したり、牢獄になったりするのだが、ランブイエは城として住まわれてきたのだ。ド・グルキュフさんは、この城がフランス文化財センター(CMN)の管理下に入ってから、CMNとモビリエ・ナショナル(国有建造物の家具調度類を保管修復、製作する機関)と、綿密な時代考証を重ねながら異なる時代のアパルトマンを再現し、ランブイエの城を生まれ変わらせた。

フランソワ1世が1547年、狩猟の途中で具合が悪くなり城にかつぎ込まれて息を引き取った部屋が、城の最も古い塔内にあったり、明治天皇が1890年公式訪問した際はサディ・カルノ大統領に日本の鹿をプレゼントし、今もその末裔(sika)たちが敷地内で棲息するなど意外な歴史が刻まれている。庭もふくめて半日、いや1日、ゆっくりと過ごしたい。
新しい息を吹き込まれた、ランブイエ城.
ナポレオン1世のアパルトマン

城の見学はナポレオン1世のアパルトマン3室から始まる。マルメゾンやフォンテーヌブローの城に比べ、ナポレオンにしてはおとなしい装飾だが、浴室だけはポンペイ遺跡風の装飾で壁を覆い、ナポレオン家の各メンバーに関連のある風景画をあしらっている。狩猟の森があり、少人数で来てリラックスできるランブイエは皇帝の気に入り、俳優や歌手の友人を招いたりもしたという。1810年に二人目の妻となるマリア・ルイーザ(の父親)に求婚の手紙をしたためたのも、セント・ヘレナ島に島流しとなる前夜、フランスでの最後の晩を過ごしたのもランブイエ城だった。

トゥールーズ伯夫妻のアパルトマン

見学コースは、時をさかのぼりルイ14世の息子ルイ=アレクサンドル(トゥールーズ伯)が城を買って居城とした時代へとつづく。トゥールーズ伯夫妻のアパルトマンと夫人のブドワール(私室)の壁が、レースのようなロココ様式の木彫装飾でしつらえられているのは、さすがはヴェルサイユからやってきた優秀な職人たちの仕事だ。夫妻はこの時代の王侯貴族には珍しい恋愛結婚をし、この城で息子ルイ=ジャン=マリー(パンティエーヴル公)と暮らした。落ち着いた、豊かな時が感じられるような部屋だ。


大統領の別荘と、フランス流おもてなし。

大統領の別荘といえば、今はヴェルサイユのラ・ランテルヌと南仏ヴァール県のブレガンソン城(この夏も、マクロン大統領がブレガンソンの海でジェットスキーをする写真がパリマッチの表紙となり、猛暑と大火災の最中なのに、と批判された)。
ランブイエはパリから50km。近いが、近すぎない距離が理想的だと第三、第四、第五共和制を通して2018年まで大統領の別荘として使われた。王政と帝政期の城がどんなだったかを見せる城は多いが〈共和制の大統領の城〉は珍しい。
新しい城内の展示では、共和制の外交シーンと、その余興も垣間見ることができる。ルイ16世も大好きだったランブイエでの狩猟は、シラク大統領が廃止するまでずっと続けられていたし、第一次石油ショックの後、堅苦しい議場でななくラフに首脳たちが話せるように開催されたG6。その晩餐会のテーブルも整えられている。庭の最高の眺めがのぞめる広間だ。フランスのお得意、料理外交を目で堪能しよう。

ジスカール=デスタン大統領は、ランブイエは家族や親しい人と過ごすのにも、仕事をするにも適していると「ランブイエは親密さと真面目な面がある」と言ったという。大統領が暮らした空間は70年代のモダンとクラシックのミックスで、どこか一般人の生活とつながるものがある。当時のダイヤル式電話や電話帳など「同じの使ってた!」と自慢したくなる。他にもオリオール大統領の息子のの部屋(1946)、首脳たちの宿泊部屋と、城内でも格の高い、フランソワ一世が没したフランソワ一世の塔内のアパルトマンも見られる(G6の際は米フォード大統領にあてがわれたそうだ)。




フランソワ一世の塔内のアパルトマン



▶︎▶︎▶︎ 後日掲載 ▶︎▶︎▶︎ ランブイエ城の庭園へ。
ルイ16世が王妃マリー=アントワネットに送った「乳製品の館」や、ランバル姫の貝殻装飾の田舎家など、まだ見どころがいっぱい。おたおしみに。
● パリからの行き方
パリ・モンパルナス駅からRambouillet駅までは電車Transilien Nで1時間15分程。TERなら35分ほど。城までは徒歩15分。Navigoカード5ゾーン有効。バスは5301、5304 (Groussay行き) 。
● Château de Rambouillet
ランブイエ城:
Rue de la Motte 78120 Rambouillet
火休。10h-13h/14h-18h。庭園8h30 – 20h。
季節により変わるのでサイトで確認を。
Grand tour券 (13€)なら国賓宿泊部屋(この部分はガイドつき見学のみ。ほぼ30分間)を含む城、王妃の乳製品の館、貝殻装飾の田舎家が見学できる。Visite découverte券(11€)だと国賓宿泊部屋が見られません。Navigo提示で1.50€割引。18歳未満、欧州居住者は26未満無料。
【ランブイエ城の庭園】
庭園内の移動手段レンタル
▶︎Rosalie :
大人ふたりがペダルをこぐ、4-5人乗りファミリータンデムrosalieのレンタルは30分で12€、1時間は18€。
▶︎自転車:
30分:6€、1時間:8€ 。半日: 20€、1日: 25€。
▶︎ボート
城の前の池ではボート遊びができる。
救命ベスト込み。30分 : 12€、1時間 : 18€。
◉乳製品の館 Laiterie de la Reine:
10h-12h45/14h-18h
◉わらぶきの貝の家
Chaumière aux coquillages:14h-18h
※城からは歩いて20分ほどかかります。
※城内も庭園も禁煙。
※お手洗いは城内のみ。
● Bergerie nationale
国立養羊所:
Parc du Château 78120 Rambouillet
www.bergerie-nationale.fr/
◉Mérinos Café – カフェ・ブティック
国立養羊所で作られたヨーグルトやチーズ、シャルキュトリーなどが食べられる。
水〜日、祭日営業、11h-18h30
Tél : 01.6108.6909
● Restaurants
城周辺にはカフェが多数あり食事にも困りません。

◉La Maison du Bœuf
ランブイエ城から歩いて10〜15分。熟成肉ほか牛肉が堪能できる店。
日替わりメニュー (前菜+主菜+デザート=22€)が充実!グラスワイン5.8€〜。予約をおすすめ。9/15から営業再開。
2 av. du Général Leclerc 78120 Rambouillet
Tél :01.3059.4889 lamaisonduboeuf.fr
◉Le Relays (Hôtel Mercure内バー)
9月でも暑い時はかつての宿場の建物のなかのバー・レストランでアペリティフを。
1 Pl. de la Libération 78120 Rambouillet
城に一番近い出入口すぐ。
https://lerelaysduchateau.com/
◉L’Épicurien
モダンなフランス料理。(月火休、水〜土:12h-14h/19h-22h。日:12h-14h30)
https://www.facebook.com/lepicurienderambouillet

Château de Rambouillet
Adresse : Rue de la Motte , 78120 Rambouillet , Franceアクセス : パリ・モンパルナス駅からRambouillet駅までは電車Transilien Nで1時間15分程。TERなら35分ほど。城までは徒歩15分。Navigoカード5ゾーン有効。バスは5301、5304 (Groussay行き) 。
URL : https://www.chateau-rambouillet.fr/
火休。10h-13h/14h-18h。庭園8h30 - 20h。 季節により変わるのでサイトで確認を。 Grand tour券 (13€)なら国賓宿泊部屋(この部分はガイドつき見学のみ。ほぼ30分間)を含む城、王妃の乳製品の館、貝殻装飾の田舎家が見学できる。Visite découverte券(11€)だと国賓宿泊部屋が見られません。Navigo提示で1.50€割引。18歳未満、欧州居住者は26未満無料。
