
原作はアメリカ人作家デイヴィッド・ヴァンによる同名小説。亡き父についての記憶から物語を発展させた半自伝的小説だ。ヨーロッパでは最初にフランスで評価され、権威あるメディシス賞外国小説賞を受賞。2021年のウーゴ・ビアンヴニュによるコミック化の成功を経て、この度、フランス人監督ウラジミール・ド・フォントネーが映画化に漕ぎつけた。
青年ロイは極北の島サックワン島に向かう。そこはかつて父親と過ごした愛憎渦巻く思い出の地。緩やかに思春期の回想が始まる。
あれは13歳の頃。主人公の前に、離れて暮らす父親がひょっこり姿を現した。父は一年間、二人きりでアラスカの孤島で暮らすことを提案。親子関係を修復し、人生の再出発を図る気持ちがあるようだ。
母の心配をよそに、自給自足の生活が始まる。天空のオーロラは言葉にならぬ美しさ。二人の心は近づく。だが、寒さや動物の襲来、食料の確保の難しさなど、過酷な現実にぶち当たる。閉塞的な空間で、次第にドラマはホラーの色彩を帯びる。そして、後半は想定外の展開にあ然となる。
ある意味、ダメな父親を観察する手厳しい毒親映画。名優スワン・アルローは原作とは異なるフランス人の父親役を、狂気と不安定さを同居させ好演。ただし、本作はダークな側面ばかりではない。父への屈折したオマージュは、メランコリックな余韻も響く。父と過ごした夏休みを描くシャーロット・ウェルズ監督の映画『aftersun/アフターサン』を、少し思い出した。
フランスが主導国で、ノルウェー、ベルギー、イギリスとの共同製作を実現。ド・フォントネー監督は映画『Mobile Homes』(2017年)で知られ、今後が楽しみな国際派である。(瑞)



