
郊外と思しき町の橋の上。「たとえ私一人いなくなって、世界は回っていくわけで……」。何かに疲れた20代女性の、どこか諦めと悟りの境地に近い心のつぶやきからドラマは動き出す。主人公の希(唐田えりか)は、日々、コンビニ店員としてレジに立っている。お金を投げるような横柄な客は絶えないし、店長に押し切られ、シフトを多めに入れらてもなすがままだ。
一人暮らしの部屋は無印良品風の無機質インテリア。せっかく田舎の母が野菜を送ってきても、小さな木のテーブルを前にコンビニ弁当やカップラーメンを食べてしまう。時には携帯で、お笑いの動画を楽しんでもいる。
とはいえ、慎ましい日常の中にも小さな出会いが待っていた。客として来店した中学時代の同級生・加奈子(芋生悠)だ。ふたりはぎこちなく歩み寄り、言葉を交わし、ゆっくりと心を通わせる。映画は終始、展開を焦ることはない。不器用な主人公が人生を咀嚼する呼吸や、歩く速度に合わせているかのようだ。そのうち、彼女の前職や家族との関係などドラマの背景も、緩やかに浮かび上がるだろう。貧しく世知辛い令和時代を生きる等身大女性への応援歌のような作品だ。

本作は第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門にてJAPAN CUTS Awardを受賞するなど高く評価され、韓国・台湾でも劇場公開。この度、満を持してフランスで劇場公開されることに。監督は本作が長編第二作目で、テレビや広告、MVの監督なども手広く手がける1990年生まれの俊英・石橋夕帆だ。
先のベルリン国際映画祭ではCM出身の岩崎裕介監督のコメディ・ホラー『チルド』が国際映画批評家連盟賞を獲得したばかり。本作『朝がくるとむなしくなる』との2作に共通するのは、重要な役に唐田えりか(自然体でつくづく良い俳優さんである)が抜擢されていること。そして、1990年代生まれの若い監督が、日本の象徴的な場所であるコンビニを舞台にした秀作を撮ったこと。両作とも感情が静かに吹きだまる奇妙な磁場・コンビニへの観察眼も興味深いので(『チルド』もいずれ仏公開されるはず)、ぜひ日本好きのフランス人を誘って見に行ってほしい作品である。(瑞)
★読者プレゼント★
『朝がくるとむなしくなる』招待券を10名さまにプレゼント。
ご希望の方は、以下の応募ボタンでメールを開き、お名前、ご住所をご記入のうえ、ご送信ください。
当選された方は、上映館のチケットカウンターで招待券をご提出ください。




