
ドレフュス ©︎MUS-Musée d’Histoire urbaine et sociale de Suresnes ©︎Grand-Palais-Rmn(Musée d’Orsay) /Hervé Lewandowski
ドレフュス事件で有名な仏陸軍軍人アルフレッド・ドレフュス大尉(1859-1935)を没後90年になって「准将」に昇級させる法案が6月2日、国民議会で満場一致で可決された。
この法案はアタル前首相 (与党の再生党)が提出したもので、「公正に燃え、過去を忘れないフランス国家は、アルフレッド・ドレフュスを准将に昇級させる」という条文の法案を国民議会に提出。出席していた197人の議員全員の賛成で可決された。上院に同じ法案を4月末に提出した社会党議員は、上院可決を経て、革命記念日の7月14日に施行したい意向を示している。
フランスの歴史に残る冤罪事件
ドレフュス事件とは、1894年にユダヤ系のドレフュス陸軍大尉が、砲撃試験の明細を独軍に送っていたとして軍法会議にかけられ、国家反逆罪で有罪となり、仏領ギアナの離島に幽閉されたことに端を発する。共和派らのドレフュス擁護運動も広がり、作家のエミール・ゾラが日刊紙に「私は弾劾する」という記事を書いたのはあまりにも有名。1899年の新たな軍法会議でも再び有罪となったが、10日後には大統領恩赦により釈放された。しかし、1899年の有罪判決が破棄されたのは1906年になってから。フランスを二分した冤罪事件として有名だが、当時の反ユダヤ主義の高まりを反映する事件でもあった。
なぜ今頃になってドレフュスの昇級なのか? 近年、フランスに歴史を清算する動きが活発なこともあるが、この法案が提出された背景には、イスラエルのガザ攻撃への反発からフランス国内のユダヤ人施設の破損など、反ユダヤ主義行為が増えていることがあると仏紙は分析する。
この法案の起源は、ル・フィガロ紙4月17日付に掲載された、モスコヴィシ元経済相、フレデリック・サラ=バルー元大統領府事務総長、ゾラの家/ドレフュス博物館館長のルイ・ゴティエら3氏の寄稿だ。3氏は極端な左派の一部がドレフュス事件の教訓に背を向け、新たな反ユダヤ主義を育んでいると批判し、反ユダヤ主義の記憶を新たにするため、1文から成る法案を提案。
それをパトリック・カネール社会党議員とアタル氏がそのまま採用して国会に提出したらしい。だがバイルー首相の中道MoDemは、この法案を議論することで、一部の政党(暗に極右の国民連合や服従しないフランス党LFIを指す)に彼らの反ユダヤ主義を隠蔽する機会を与えたくないとして国会での議論を拒否した。
社会が分断された今だからこそドレフュス事件の教訓が有用なのか、事件が政治に利用されているだけなのか、判断は難しいところかもしれない。(し)
《Alfred Dreyfus. Vérité et justice》
ドレフュス事件とドレフュスの闘いを、250点の古文書、写真、映画、芸術作品を通して探る展覧会が開催中。8/31まで
Musée d’art et d’histoire du Judaïsme :
Hôtel de Saint-Aignan 71 rue du Temple 3e
火〜金 : 11h-18h(水-21h)土日 : 10h-19h
13€ / 9€ / 5€ (18〜25歳のEU在住者)
18歳未満無料

Musée d'art et d'histoire du Judaïsme
Adresse : Hôtel de Saint-Aignan 71 rue du Temple , 75003 Paris , Franceアクセス : Rambuteau
URL : https://www.mahj.org/fr
火〜金 : 11h-18h(水-21h)、土日 : 10h-19h 13€ / 9€ / 5€ (18〜25歳のEU在住者)、 18歳未満無料。
