RIBERA Ténèbres et lumière
スペインで生まれ、生涯イタリアで活動したバロック美術の大画家、フセペ・デ・リベラ(またはイタリア式にジュゼッペ・デ・リベーラ)(1591-1652)の、明暗を強調した劇的な宗教画の世界を堪能できる展覧会が始まった。パリではルーヴル所蔵の「エビ足の少年」くらいしか見ることのできない彼の代表作を一堂に集めた本展は、フランスでは初めてで、今秋、注目の展覧会の一つだ。カラヴァッジョから光と闇を明確に描き分ける明暗技法と、人物を理想化せず欠点もそのまま描く写実的で自然主義的手法の影響を受け、光と闇を巧みに際立たせて優れた宗教画を描いた。上半身裸の聖人、ヒエロニムス(ジェローム)やアンデレの肖像は、壮年から老年にかけての少し筋肉が落ちた男性の体型を如実に表現している。リベラの解剖学知識は完璧で、実際にモデルを使って描いた、と本展のコミッショナーは言う。青年期はローマで活動し、五感をテーマにしたシリーズを描いた。その一つ、「嗅覚のアレゴリー」は、ツンとする玉ねぎの臭いで涙がでた男性を描いたものだが、乱れた服装からも臭いが漂ってくるような現実味のある作品だ。その後活動の拠点としたナポリでは、実際にモデルを使って、ホルモンの影響で髭の生えた女性が乳児に乳を含ませ、後ろに夫を従えている像を描いた。膨らんだ乳と髭の対比が劇的効果をあげている。聖書の場面であっても、殉教する聖人や乞食の肖像であっても、リベラの絵からは人間が圧倒的な迫力で迫ってくる。それに酔わされたような感覚で会場を後にした。2/23まで。(羽)
Petit Palais Musée des Beaux-Arts de la ville de Paris
Adresse : avenue Winston-Churchill, 75008 ParisTEL : 01.5343.4000
URL : https://petitpalais.paris.fr
火〜日 10h-18h (金土 -20h) 12/25 と1/1休館 15€ 割引料金13€