夫に薬物で意識不明にされ72人から強姦された妻
薬物で眠らせた妻を72人の見知らぬ男たちに強姦させた夫と、強姦したとされる被告50人に対する裁判の公判が、9月2日にアヴィニョンの裁判所で始まった。前代未聞の事件の裁判に、被害者を支援する運動も起きるなど、注目が集まっている。
事件は2011年~20年にヴォクリューズ県マザンの夫妻の自宅で起きた。ドミニック・ぺリコ被告(現在71)は1971年以来連れ添った妻ジゼルさん(同71)を強い抗不安薬で眠らせ、インターネットで募った男たちに無償で性行為をさせ、その様子を録画・保存していた。しかし、 20年9月にスーパー内で女性客のスカートの中を盗撮していたところを取り押さえられ、押収されたパソコンから妻に対する強姦事件が発覚。72人による92回の強姦行為のうち、当時21~68歳の50人の身元が特定された。
ペリコ被告以外の50人の被告のうち35人は、性的に奔放な夫婦のゲームであると思い、強姦したとの認識はないと供述している。健康上の理由から10~16日の1週間にわたり公判を欠席したペリコ被告は17日、「彼らはみんな知っていた」と証言。薬物を投与されて意識のない人と性関係を持つことは(性交渉の)「同意」がないとして強姦とみなされるため、50人は最高で懲役20年の刑を受ける可能性がある。ペリコ被告は9歳のときに自身が強姦されたと証言しているが、真偽のほどは不明。精神鑑定によると、特に精神疾患はなく、性的倒錯の傾向があるという。
50年間、こども3人を育て上げ、円満な夫婦として周囲の目に映っていたカップルにまつわるこの事件はメディアや国民の注目を集めている。さらに、当初は非公開の裁判を求めていたジゼルさんは、「恥じるべき側は変わる」(恥じるべきは被告たち)として公開を認め、名前や顔をメディアにさらして発言する姿に、薬物を使用した性暴行と闘う女性のシンボルとなった。14日にはパリ、マルセイユなど全国の主要都市でジゼルさんを支援し、性暴行や強姦の被害者を支援するデモが行われた。パリで3500人、マルセイユで数百人~千人、レンヌで200~400人などを集め、男性による女性の強姦を許すメンタリティーがまだ社会に残っていると訴えた。原告団に加わっているジゼルさんの娘キャロリーヌ・ダリアンさんは、事件発覚後、市民団体を立ち上げ、薬物の影響による性暴行と闘う運動を行っている。公判は12月20日まで。(し)