Nuit Blanche 2024
今年で23回目となる「ニュイ・ブランシュ」が6月1日の夜に開催される。年に一度の、公共の場所や美術館で現代アートの新作やインスタレーション、パフォーマンスを無料で、夜を徹して楽しむことができるイベントだ。今年はグラン・パリ首都圏、ルーアン、海外県の都市でも開催される。
今年のテーマは「海外」。カリブ海、オセアニア、インド洋などの島の文化と、歴史からインスピレーションを得たパフォーマンス、音楽、ダンス、演劇、インスタレーションなどが盛りだくさんに繰り広げられる。今年はアート・ディレクター、クレール・タンコンさんの意向を反映し、造形美術よりもスペクタクル色が強い。タンコンさんはフランス海外県グアダループ出身のキュレーターで美術研究者だ。米国など外国での生活が長く、海外のビエンナーレや展覧会のキュレーションも手がけてきた。「現代アートを造形美術に限ることなく、広く現代の価値観を反映したアートと捉えてほしい」と言うタンコンさんの目は、ポスト・コロニアルにも向けられる。フランツ・ファノンや、旧植民地から海を渡ってくる移民(ディアスポラ)を題材にした作品を出すのは、彼女ならではのアプローチだ。アーティストは海外圏出身者や、海外県でアーティスト・レジデンスに参加した人が多い。
2024年のパリのオリ・パラ開催で、フランスがこれまで以上に国際的な注目を浴びる。そのフランスには多様な文化があり、それがフランスを豊かにしてきたことを見せるのも今年のニュイ・ブランシュの目的だ。オリ・パラ開催に合わせ、競技種目のフェンシングとスケートボードも演目の中に入っている。143のプログラムの中から、パリで行われる3点を紹介する。
Saint-Georges en mouvement(s) : Chevalier virtuose
動くサン・ジョルジュ:名人シュヴァリエ
シュヴァリエ・サン=ジョルジュはグアダループで地主と奴隷の女性の間に生まれ、パリに出て宮廷作曲家になった。彼をテーマにバロック音楽演奏、コンテンポラリーダンス、フェンシングを組み合わせたパフォーマンス。数々の国際コンクールで入賞した、グアダループ出身のバイオリン奏者ロミュアルド・グランベール=バレが演奏する。19h30、20h30、21h40、22h45の4回(一回の演奏は35分間)。
Le Carreau du Temple
4 rue Eugène Spuller, Paris 3e
⚫︎ Lucioles 蛍
地球海、大西洋を渡ってきた移民のそれぞれの話を書いたパトリック・シャモワゾーが書き下ろした詩を俳優たちが語る。建物には海の色が映し出され、観客は登場人物の人生を自分のことのように体感する。コーラスを交えた演劇パフォーマンス。19h〜01h45 : 1h15のパフォーマンスを2回。
Bibliothèque historique de la Ville de Paris :
24 Rue Pavée, Paris 4e
⚫︎ We will not bow
我々は頭を下げない
トリニダード・トバゴ出身のマリオン・グリフィスが「海外の島々」という時、そこには日本も含まれている。グリフィスはインド洋のコモロ連合から日本まで、島国の多様性を見せる。カッパには頭頂部に皿があり、そこが乾くと死ぬので、いつも皿に水を保っていなければ生きていけない。タイトルの「頭を下げない」には水がこぼれないようにするという意味のほか、「権力に屈しない」という意味がある。カッパに扮したアマチュアのダンサーたちがベルヴィル公園の中を移動するパフォーマンス。18h、 20h30 : 1hのパフォーマンス2回。
Parc de Belleville :
入口は、パリ20区の rue Julien Lacroix と rue Piat、2カ所にあります。
ニュイ・ブランシュ公式サイト : www.paris.fr/nuit-blanche-2024