3月4日、ヴェルサイユで開かれた国民議会と元老院の両院合同会議で「妊娠中絶(IVG interruption volontaire de grossesse)を行う保証された自由」を憲法に明記する法案が成立した。憲法34条が改正され、世界女性の日の3月8日、法務大臣と大統領が執り行う蠟印の儀(Cérémonie de scellement)をもって公布となる。
1973年に中絶を合法化したアメリカで、2022年になって連邦最高裁判所が中絶の権利を違憲としたことを受け、フランスではその数日後に中絶の権利を憲法に表記し、ゆるぎないものにするべく法案が提出された。ヨーロッパでもポーランド、ハンガリー、イタリアなど極右が政権に着いてから中絶が違法となったり、アクセスが困難になっている国もある。
1975年に合法化したフランスでも、右派・極右には中絶そのものに反対したり憲法への明記に反対する議員も多く、極右団体による「プランニング・ファミリアル」(避妊・中絶相談所)の襲撃やいやがらせなども多数あるという。
フランスでは、2012年からは国の医療保険「セキュリテ・ソシアル Sécurité sociale」が中絶費用を全額払い戻すようになった。現在は外科的中絶(真空吸引法)なら14週間目まで(=最後の月経の始まりの日から16週間まで)、中絶薬使用の場合は7週間まで=最後の月経の始まりの日から9週間まで)中絶が可能となっている。