ピーク時から20%の減少
フランス国立統計経済研究所(INSEE)が1月16日に公表した数字によると、2023年のフランスの出生数は67万8000で、一昨年より6.6%減。今世紀の出産ピークだった2010年に比べると20%も少ないことが明らかになった。出生数は第2次大戦後で最低の数字だ。マクロン大統領は同日夜の記者会見で出生数回復のための対策を自ら発表した。
欧州諸国のなかでフランスは 1人の女性が一生の間に産む子供の平均数(合計特殊出生率)でトップだ。今世紀では2010年の2.03人をピークにおよそ1.8~1.9人の水準を保ってきた。EU諸国の平均では1.5人だが、ドイツは1.53人、最も低いのはイタリア1.24人、西1.19人など(いずれも2020年の数字)。しかし、フランスは2022年1.79人、23年1.68人と連続して下降。インフレなど経済的要因によるものか、ウクライナ戦争など不安定な国際情勢の反映か、気候不安(エコ不安)により子どもをつくることを躊躇する傾向か、人口学の専門家は様々な要因を挙げている。
出生数と死亡数の差(自然増減数)はプラス4.7万人(出生数のほうが多い)で、これも第2次大戦後以降最も低い数字。INSEEは、出生数は減少しつつも自然増減数は2035年まではプラスにとどまり、それ以降はマイナスになって人口が減少に転じる可能性が高いと予想している。
6ヵ月の「出生休暇」を、大統領自ら発表
こうした傾向を受けて政府は昨年夏、人気のない育児休暇の改革の意向を示していたが、マクロン大統領は16日の今後の政策運営についての記者会見で、育休を6ヵ月間に短期化して手当額を引き上げる改革を行い、「出生休暇」と改名する方針を発表。
現行制度では母親や父親が、子どもが3歳までに1年間(2回更新可)の育休を取れるが、家族手当金庫(CAF)から支給される手当が月429€と低いため、女性の14%、男性の1%しか育休を取得していない。政府は今後、同改革の導入時期や支給額を明らかにする予定だ。また、大統領は「人口の再武装」を目指して大規模な不妊対策に取り組む意向も示した。
2022年の調査によると、フランスではカップルの25%(350万人)が不妊に悩んでいる。大統領の掲げる「出生率向上によりフランスの国力を高める」という姿勢は、今回の右寄り保守的な政策の一環として打ち出されているものの、出生率低下問題にマクロン氏自ら発言するのはそれだけ危機感が強いということだろうか?(し)