モンマルトルの画家ステンレン、没後100年の回顧展。
Théophile-Alexandre Steinlen
テオフィル=アレクサンドル・ステンレン(スタンラン/1859-1923)は黒猫のポスターで世界的に有名だが、その人となりは意外に知られていない。実はこんな人だったのか、と驚きの連続の展覧会である。
スイスで生まれ、若い頃にフランスに移り、生涯モンマルトルに住んだ。雑誌の風刺絵、豪華本の挿絵、デッサン、油彩、ポスターなどあらゆるものに手を染め、全てを巧みにこなした。作品数が多いため独自のスタイルが見えにくいが、没後100周年記念の本展ではオルセー美術館の学芸員をキュレーターに迎え、ゾラやゴーリキーが好きで、いつも民衆の側に立っていた彼の姿勢が表れる作品に焦点を当てた。
パリ・コミューン後に建設が始まり、彼のモンマルトル在住中に竣工したサクレ・クール寺院に対してコミューン抑圧の象徴だと反発した一人だった。仕事に向かう鉱山労働者や、街娼、祭りを楽しむ庶民を描いた。カトリック教会の権威に反対し、貧者と子供を従えたキリストのような人物が聖職者に対峙する場面を描いた絵もある。
本展での発見の一つは、ステンレンより30歳若く、モデルも務めた家政婦のマセイダだ。西アフリカのバンバラ族出身で、マネの「オランピア」のようなポーズでも描かれている。ステンレンの死後、アトリエに残された作品の半分を相続した。キュレーターによれば、彼女についての情報は少なく、今後の研究の対象だという。動物保護協会の会員だったステンレン。猫の絵は外せない。黒猫を中心に集う大勢の猫を描いた大作「猫の礼賛」(画像)など猫の絵もふんだんに楽しめる。2/11まで。(羽)
Musée de Montmartre Jardins Renoir
Adresse : 12 rue Cortot, 75018 ParisTEL : 01.4925.8939
URL : https://museedemontmartre.fr
10h-18h 無休 入館料15€ 18-25歳 10€ 10-17歳 8€ 10歳未満無料 身体障害者 10€ 教員 10€