Ancienne gare de Déportation de Bobigny
パリ北東の郊外ボビニーにある、第二次世界大戦中にユダヤ人を強制収容所に送るために使われた駅がメモリアルとして公開された。フランスでは対独協力政府のもと、1942年から44年までの間、約7万5千人のユダヤ人がアウシュヴィッツ・ビルケナウなどの強制収容所へ送られた。全74回の列車移送のうち、21回、22500人がこの駅から列車に詰め込まれ運ばれていった。生還者はたったの5%。ここから徒歩30分、移送前に人々が集められたドランシー収容所もメモリアルになっている。
ボビニー駅からアウシュヴィッツへ向かう最初の列車が出発してから80年となる今年7月18日に、メモリアルの除幕式が行われた。2005年に歴史的建造物に指定されてから18年かかったが、資金繰りや補修工事など、負の遺産の運営は簡単ではないという。ボビニー市長をはじめ、関わった人々の平和のメッセージを後世に残したいという思いなしには実現され得なかったことも心に留めておきたい。
線路まで下る坂道には木製のベンチが等間隔に置かれており、それぞれにボビニー駅から移送されていった人々の証言が刻まれている。「最後の点呼。返事はどれも小さく、涙で声がかすれていた」ここからアウシュヴィッツに送られたオデット・アバディさんの言葉だ。実際に使われた線路の隣には、パリ周辺からの全74回の強制移送の記録が記された鋼の板がずらりと並ぶ。移送された人々の手紙や証言、ボビニー駅とホロコーストの歴史を解説するパネルが各所に設置されており写真や資料も豊富だ。
決して広くはないメモリアルだが、死への旅がまさにここから始まったこと、ここから移送されていった一人一人に人生があったことが重くのしかかるように伝わってくる。9月6日からはガイド付きの見学も行われる予定。現代を生きる私たちが看過できないホロコーストの記憶、ぜひ見にいってほしい。(赤)
Ancienne gare de Déportation de Bobigny
Adresse : 151 av. Henri Barbusse, 93000 Bobignyアクセス : Escadrille Normandie Niemen
M°Pablo Picasso駅からトラムT1に乗りEscadrille Normandie Niemen下車。徒歩10分。 水-日、9h30-12h30/14h-17h。 バカンス開けは9月6日から。入場無料。