公職者透明性高等機関(HATVP)への政府閣僚の資産・所得申告によると、今年6月に組閣されたボルヌ内閣の閣僚は41人中19人が百万長者であることがわかった。
フランスではHATVPが、政府閣僚の資産・所得を申告させてチェックし公表している。電子版ル・モンド12月2日付の解説記事によると、ボルヌ内閣の閣僚の平均資産は190万€で、2017年のフィリップ内閣閣僚の160万€、16年のヴァルス内閣の110万€を上回った。富豪が多い内閣と批判された17年よりも、さらに富豪ぶりが増したわけだ。
資産では、祖父が自動車販売会社を創業するなど資産家出身のリステール国会関係相がトップで1064万€、2位はウデア=カステラ=スポーツ相648万€、3位はフィルマン=ルボド国土整備・医療従事者担当相604万€。過去5年間分を申告する所得では、元弁護士のデュポン=モレッティ法相が308万€(年平均は62万€)でトップ、2位は資産でも2位のウデア=カステラ氏で294万€(同59万€)。同氏は元テニス選手で、会計監査院、保険アクサ、流通カルフールなどの重要ポストを歴任。3位は経済協力開発機構(OECD)、アクサ社などの職歴を持つ経済学者のブーヌ欧州担当相で188万€(同38万€)だ。ちなみに、資産の最下位はコーベル児童担当相の3万€、所得最下位はフォール田園地域担当相で13万€(年平均26000€。だたし資産は255万€)
ル・モンド紙の分析によると、閣僚41人のうち38人は、資産または所得でフランス人全体のトップ10%に入る富豪だ。資産の52%が不動産で45%が金融資産だが、41人中38人(93%)が家やアパートの持ち主であり、国民全体の60%という数字をはるかに上回る。
3ヵ月かけて申告を審理したHATVPは、カイユ―地方公共団体相がパリに所有する住宅ビルを過小評価して申告したと指摘した。同氏はそれに反発し、「政府に迷惑をかけたくない」と11月末に辞任した経緯もある。また、HATVPは12月1日に閣僚の資産・所得申告を承認したものの、11人に利益相反の恐れがあると警告を発した。
たとえば、パニエ=リュナシェ=エネルギー転換相は3人の子が同相の父親の創立した投資会社の株主であり、同社は石油ペレンコ社と関係が深いとして、ペレンコ社関係、そして夫の勤めるコンサルタント会社関係の案件にはタッチしてはならないと11月15日付の政令で定められた。エネルギー転換相が石油会社とつながりがあるのはいかにもまずいだろう。
閣僚が特定の企業と関係が深い場合、中立な立場で職務を遂行できるのかという疑問もさることながら、9割以上が富豪から成る内閣にインフレに苦しむ庶民の感覚が理解できるのかという疑問も湧いてくる。(し)