連日伝えられるオミクロン株感染拡大のニュースは気になるが、まだ冬休みは終わっていないから何かしたい。今さらホテルの予約もわずらわしいし、そんな予算はもう残っていないし、遠出もできないから、手頃に身軽に「dépaysé(e)(気分転換)」したいと考え、そして思いついた。
リールで遊ぼう。
パリ北駅からTGVに乗って1時間で来られるこの北の都は、一歩足を踏み入れた瞬間から別世界だ。特にこの時期、北部特有のレンガ造りの建物にイルミネーションが加わると、歩いているだけで心が躍る。地方の歴史や文化をきちんと学ぶのはまたの機会にして、今回はフランドル駅前からまっすぐ伸びる大通り Rue Faidherbe (リュ・フェデルブ)を進んで、大広場 Grand Place (グラン・プラス)に直行。
目印は大観覧車。去年はコロナ禍で姿を見られなかったこの高さ50mの La Grande Roue (ラ・グランド・ルゥ)は、30年来のリールの年末年始の風物詩だ。乗り場入り口にはサンタクロースやトナカイの像が並び、その横には高さ18メートルのクリスマスツリーが設置され、奥に臨む旧証券取引所や時計台の情緒も加わって、子供なら本当におとぎの国に迷い込んだ気分になるだろう。大人も夢見心地の空間だ。
そのほんの数十メートル先、地下鉄Rihour駅のすぐ横では「クリスマス村 Village de Noël」が開催されている。一帯は仮設の壁で囲まれ中は見えないものの、行列ができているので期待が膨らむ。長蛇の列でも5分〜10分待ち、衛生パスの提示と荷物検査を受けるとスムーズに入場可能。中はいわゆるマルシェ・ド・ノエル。今年は約90の出店がある。クリスマスグッズや工芸品を並べたスタンドの間から、ホットワインや一番人気ワッフルの香りがただよってくる。ジャガイモやベーコンと共にオーブンにかけたとろみのついたチーズを提供する店もリールらしい。
ふらっと見て回るだけなら30分程度のアトラクション。広すぎず、狭すぎず、疲れない程度にちょうどよく回れる規模が「気軽に楽しむ」旅にはぴったり。
これだけでも十分冬のリールを満喫できるので、パリを午後にゆっくり出て19時くらいまで大広場のイルミネーションを満喫して20時代のTGVで帰るのもあり。せっかくだからもう少しリールを楽しみたいなら、日中は大広場からつながる古い街並みの Vieux Lille 探索をして、夕方から光に包まれた幻想の世界を堪能するコースがおすすめ。いずれにしても、日帰りでも十分に dépaysé(e) 可能、思いついたその日に北駅に向かってはどうだろう。(七)
パリからリールに行くには:
→パリ北駅 (Paris Gard du Nord) からTGVで62分(片道16〜63ユーロ)。到着駅は、Lille Flandres と Lille Europe どちらでも可。
https://www.sncf.com/fr
→高速バス利用の場合は所要時間2時間から3時間半(片道4〜25ユーロ程度)。
https://www.flixbus.fr/
大観覧車 La Grande Roue 大人5ユーロ。子供3ユーロ。1月16日まで。
リール・クリスマス村 Le Village de Noël de Lille 2021年12月30日まで。