コロナウイルスは仏映画界にも打撃を与えている。3月13日には100人以上の集まりが禁止となり、15日には映画館の営業そのものが禁止に。ヒット中だったガブリエル・ルボマン監督『De Gaulle』や、マルタン・プロヴォ監督『La Bonne épouse』も、突然公開中止の憂き目に遭った。5月12〜23日まで開催予定だったカンヌ映画祭は、3月19日に正式に延期を決定。だが、併設の映画マーケット(見本市)は、ネット試写やヴァーチャルで商談の場を設けるなど代替策を検討中だ。
カンヌは現在6月末~7月頭の開催を模索中だが、例えばこの時期は大西洋岸の人気映画祭ラ・ロシェル映画祭の開催時期。カンヌの決定を受け、ラ・ロシェルはすぐに中止を検討し始めた。このように映画業界は一つを動かすと他への影響が甚大であり、複雑なパズルを前に頭を抱える状況となっている。
とはいえ、この状況下で抜け道を探す動きもある。例えば、4月1日に公開予定だったバスチャン・シモン監督の映画『Les Grandsvoisins, la cité rêvée』は、急きょ、ネット上のプラットフォームE-CINEMAで公開されることになった(https://www.25eheure.com/)。本作は、パリ14区にある市民のための共生施設レ・グラン・ヴォワザンのスタッフや住民を追いかけたドキュメンタリー。E-CINEMAはVODとは異なり、映画館と同じように上映する地域と上映時間が定まり、上映回によっては監督がネット上に登場し観客と交流もする。値段は一本5€だ。
また、市長がコロナに感染したニース市だが、当地のシネマテークと協力し、市民や近郊住民に向けネット上の名画座を開設(https://cinenice.mediatheques.fr/)。第1週目(3/23-29)はドゥミの『天使の入江』など名作10作品が無料で鑑賞できた。作品は週替わりで更新される。ニースはカルネの『天井桟敷の人々』やトリュフォーの『アメリカの夜』の撮影場所であるラ・ヴィクトリーヌ撮影所があり、映画文化に強い誇りを持つ街だ。
このようにフランスは映画文化を絶やさぬよう様々な試みを続ける。先日も、コロナを発病したが完治し復帰したフランク・リステール文化相が、被害が甚大な文化セクターに向け緊急支援2200万€の拠出を決定し、映画にはCNC(仏国立映画センター)が入場税の支払いの中断や、劇場や配給会社への助成金支払いを前倒しするとした。しかし、全体の救済にはほど遠く、第二、第三の措置が待たれる。(瑞)