10年ほど前まで、パリから多くの都市に夜行列車が出ていた。寝台車で行く旅は、ホテル代が節約できる上、到着後すぐに活動できるので便利だ。ところがフランス国鉄(SNCF)が路線の赤字を理由に夜行を減らし、ついにパリとトゥールーズ/ロデス/ブリアンソン/ラトゥール・ド・キャロル(ピレネー地方)を結ぶ線だけになってしまった(地図)。
危機感を持った鉄道利用者とアソシエーションが「Oui au train de nuit! 夜行列車にウイ!」という団体を作り、夜行を増やすことを要求する署名運動を始め、約15万筆を集めている。観光見本市の時にはパフォーマンスをして政府、SNCFなど決定権のある人たちにアピールし、同じ主張をする人たちのヨーロッパの連絡網 Back on Track とも連帯している。
夜行列車は風前の灯火に見えたが、最近、風向きが変わってきた。デンマークで生まれた「飛行機に乗るのは、温室効果ガスを増やす行為なので悪だ」という風潮が、ヨーロッパ中に広がりつつある。ドイツの鉄道会社がフランスに進出し、パリ=ニース間で夜行列車を復活させる動きもある。SNCFは2018年9月、現存する夜行列車の路線は維持し、車両を近代的にすると発表した。人々のエコロジー意識が高まり、60-70年代のような夜行列車の黄金時代が再びやってくるだろうか。(羽)