国立統計経済研究所(INSEE)が9月15日に公表した数字によると、家庭向け食品は昨年8月比で11.2%、21年8月比では19.9%値上がりした。コロナ危機とウクライナ戦争の影響を受けた政府のインフレ抑制策がほぼ終了するなか、庶民の生活はますます厳しくなりそうだ。
INSEEによると、食品に洗剤・保健用品など日用品も含めた一般家庭の典型的な買い物籠(38品目)は、21年9月から23年8月で102.33€から126.01€になり(23.14%増)、ル・モンド紙9月20日付では、消費者はメーカー品よりも安い小売ブランドやノーブランドの商品に切り替えたり、有機食品を買わなくなったり、全体的な買い控え傾向が見られると報じている。そこにガソリン・軽油の値上がり、規制電気料金も2月に15%、8月に10%値上がりしたのが追い打ちをかけ、月末が苦しいという国民が22年1月の37%に比べて、現在は50%近いという。
政府は昨年、電気・ガス料金凍結のためだけで450億€を予算に計上。政府の規制する電気料金については2024年末まで値上げ抑制策が続くものの、EU財政赤字規制が来年1月から復活することもあり、政府は財政赤字削減の姿勢を明確にしている。そのため、低所得世帯に対して電気・ガス・燃料費を100€補助する「エネルギー小切手」は復活させない意向で、食品・日用品メーカーや小売り大手に値上げ抑制を呼びかけたり、ガソリン・軽油を仕入れ価格より安い値段で売る(原則違法)という例外措置の導入方針を発表。しかし、トタル・エネルジー社は燃料の値段を2024年も1.99€/ℓに抑えることに合意したが、大手流通系のスタンドや独立系スタンドは反対している。マクロン大統領は24日、仕入れ値で売ることや、低所得世帯へのガソリン・軽油小切手100€を提案した。
野党は政府に対し、生活必需品の一時的な価格凍結、インフレ率相当の給与引上げ、石油製品のTVA引下げなどを求めている。貧困者に無料の食事や食品を配布する市民団体「心のレストラン」は9月初め、今年の登録者がすでに130万人と、昨年1年間より20万人増え、3500万€の運営費が不足していると広く支援を呼びかけた(政府が1500万€の特別支援を約束)。その他の団体も支援希望者の増加による資金難を訴えている。
学生なども含めて生活を維持できない人が増えているのは確かだろう。少なくとも、低所得者に的を絞った支援策は継続させるべきではないだろうか。(し)