かつて日本の農村には、畑の中にツボを埋め、そこに人糞を貯めて発酵させ、肥料に使う習慣があった。野良仕事の時のトイレの役目も果たしていたが、化学肥料の普及で姿を消した。その原理が今、フランスで注目を集めている。
パリ市は2018年にサンルイ島などに、ナントのスタートアップが作った男性用小便器「ユリトロトワールUritrottoir」を設置した。水を使わず、尿をワラなどに吸わせてコンポストにするバイオトイレ(仏語でtoilettes sèches)の一種だが、目立つ色のトイレが単独でポツンと置かれたため、市民の反応は賛否両論だった。7月にパリ市が設置した小便器「ナチュリノワール Naturinoir」は、集めた尿をタンクに溜め、殺菌、発酵させて農地で肥料として使う、別のタイプだ。都市の有機廃棄物をコンポストや肥料にするモンペリエの協同組合「エコセックEcosec」が製品化した。現在、地下鉄2号線スターリングラードとラ・シャペルの中間点に1つ、ラ・シャペルとバルベス・ロシュシュアールの中間点に1つある。どちらも高架区間の橋脚に接した目立たない場所だ。2年で環境意識が変わったのか、場所が良かったのか、概ね好評だが、使用者のマナーが悪いのか、技術上の問題か、尿もれ(水漏れ?)の問題が出てきた。普及にはまだ時間がかかりそうだ。(羽)