アジャクシオでレストランを経営していた祖父を持ち、自身も生粋のコルシカ人というマリー・ポールさんが、ヴォージュ広場の目と鼻の先にこの店をオープンしたのは1997年のこと。店内はレトロなオブジェや、コルシカ関連のポスター、名産物の広告などで飾られている。
アジャクシオでは市場の屋台で売られる定番の軽食、incciulateは、あめ色の玉ネギを詰めた薄いパイのようなもの。イノシシのテリーヌは自家製で、前菜の中で1番人気なのだとか。生ハムとメロンだって、ここではコルシカ産コッパで楽しめる。アジャクシオ風ムール貝のソテーは、トマトとニンニク、ブラックペッパーが効いている。
メインの中でトップの人気を誇るcustighjoliは、豚のあばら肉のグリル。これはもう骨を持ってかじりつくのが正しい食べ方。パリッと焼けた皮の下は脂が程よく混ざった肉が柔らかくジューシーで止まらない。
メインで頼みたかったtianu corseは、大きな白インゲン豆とソーセージとパンチェッタの煮込み。夏の間はメニューにないけれど、秋にはまた戻ってくるそう。その代わりに取った、肉団子のポレンタ添えが思いがけず絶品だった。
イノシシのひき肉は全くクセがない。キノコのソースがとにかく秀逸で、尋ねるとシヴェのソースだと言う。なるほど赤ワインの酸味かと納得しつつも、このソースをここまで滑らかで透明感があるソースに仕上げられるのはただ者じゃないと感心した。厨房を担うフランクさんのことを« Mais oui, Franck, il est saucier ! 彼はソースの達人だから»と自慢げに言うのがよくわかる。
デザートには羊乳チーズの盛り合わせ。マイルドなイメージのある羊乳だけど、さすがコルシカだけに、どれも強烈な熟成具合だ。強いチーズが大好きな人はチャレンジしてほしい。口直しに取ったフランが、チーズに負けた舌を優しく癒してくれるが、これもまた迫力のボリューム。ワインはもちろんコルシカワイン。20種類ほどあるので、マリー・ポールさんと相談して、コルシカのひと時を彩る1本を選ぼう。(み)
Auberge Chez Rosito
Adresse : 4 rue du Pas de la Mule, 75003 ParisTEL : 01.4276.0444
アクセス : M°Chemin Vert / Bastille
12h-14h/19h-21h30 月昼休