南フランスの夏やすみ。〈その3 アンリ・ファーブルの家に行く〉

Harmas Jean-Henri Fabre

昆虫標本がいっぱいの展示室。©MNHN JH Fabre

 「ファーブル昆虫記」で知られる、ジャン=アンリ・ファーブル(1823-1915)。そのファーブル先生が、1915年に92歳で亡くなるまでの36年間を過ごした家が、アヴィニヨンから約30キロのセリニャン・デュ・コンタ(Sérignan-du-Comtat)という小さな村にあります。あの有名な「昆虫記」 (Souvenirs entomologiques)が執筆された家と、様々な観察と実験のために作った庭があります。彼はここをプロヴァンス語で荒地を意味する「アルマス(Harmas)」と呼び、生きた昆虫の行動学研究所としました。

©MNHN JH Fabre

 ファーブル先生の庭には、南仏や地中海の植物を中心に約500種類の植物種が自然な形で育成され、観察のための装置が置かれた区画があります。その中には、珍しいシモツケ(Spiraea japonica)や、絶滅してしまったと考えられていたチューリップの一種も残っていました。

 ファーブル先生の死後、フランス国立自然史博物館によりこのアルマスは保存されていて、多種多様な植物の自然な共生状態を保つため、専門家が毎日庭の手入れをしています。ファーブル先生が植えた木も成長を続け、蝶や蜂、鳥や亀などたくさんの虫や生き物たちと共に、今日も暮らしています。

植物好きや昆虫好きにはたまらない、素敵な庭。

 母屋には、愛用のオルガンや調度品などが展示され、当時の暮らしの様子が再現されています。研究室には、観察用の装置や昆虫標本はもちろんのこと、ファーブル先生が描いた精密で生き生きとしたキノコ類の水彩画や、鳥の巣の標本や貝の標本など、昆虫以外のコレクションもあり、博学多才ぶりがうかがえます。また、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンと交わされた書簡や、狂犬病ワクチンで有名なルイ・パスツールとの逸話を思い出させる蚕の繭(まゆ)もあります。そして、昆虫記を書き上げた、意外なほど小さな愛用の机も、ちゃんとそこにありました。

 驚くことにファーブル昆虫記を「昆虫記」と和訳して初めて日本で出版した(1922年)のは、あの大杉栄でした。大杉栄の和訳は第1章のみで終わってしまいましたが、その後いくつもの和訳が出版され、多くの関連書も出版されました。身近にいる小さな生命の神秘と、驚くべき機能に気づかせてくれるファーブル昆虫記は、私たちに大きな感動を与えてくれました。さらに、2017年には少年時代から昆虫採集を趣味としてきた仏文学者の奥本大三郎先生による昆虫記の「完訳」が完成し、再び注目を集めることになりました。

 なぜかフランスではファーブル先生はあまり有名ではありませんが、南フランスに行くのであれば、このアルマスはぜひ訪れたい場所です。偉大なる小さきものたちの生きる姿を見つめ続けたファーブル先生の、情熱と偉業を支えたこの庭を散策しつつ、大切な自然環境に想いを馳せる時間が持てることでしょう。(高)

植物やキノコ類にも造詣が深かった。 ©MNHN JH Fabre

INFORMATIONS

Harmas Jean-Henri Fabre
445 Route d’Orange 84830 Sérignan-du-Comtat 
季節によって開館時間が異なるので要確認。
www.harmasjeanhenrifabre.fr
入場料 : 7/5€ 3歳未満無料。
TGVオランジュ駅から8キロ。オランジュ駅からバス3番 Valréas行きに乗り、
rond-point de l’Harmas下車。
Avignon-TGV駅からはタクシーで30分くらい。
エクスから車で30分くらい。

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ちょっと足を延ばすなら、やっぱりツアーが便利で安心
AEVAツアーズ(旅)
Com O’ Japon(旅)
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L’Amitié Voyage(旅)
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ほとんどのフランスの人は、ファーブル先生の庭に泉(フォンテーヌ)があることを知りませんが、「ファーブル・ドゥ・ラ・フォンテーヌ(Fables de La Fontaine)」は、誰もが知っています。

ファーブル先生の庭にある泉(Fontaine)

 

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