世界初の女性監督はなぜ無名なのか。

『Be Natural, l’histoire cachée d’Alice Guy-Blaché』

©Splendor Films

 「千本以上の作品を書き、監督し、製作した。だが “彼女”は、貢献した産業から忘れられた」。かつてマーティン・スコセッシが発した言葉だ。その “彼女”とはアリス・ギィ=ブラシェ。映画黎明期に活躍した世界初の女性映画監督である。パリ近郊サン・マンデ生まれのフランス人だ。

21歳でゴーモンに入社。リュミエール兄弟のシネマトグラフを発見後、自ら監督業に名乗りをあげる。キャベツ畑に赤ちゃんが転がる代表作『キャベツ畑の妖精』は、世界初の物語性のある映画のひとつ。のちに渡米しスタジオを創設。監督業も続け成功を収めた。映画以上にドラマティックな人生だ。

驚くのは作品の革新性。クローズアップ、フィルムの彩色、無声映画時代の有音映画など、新しいことに果敢に挑戦。テーマも斬新だ。子供の虐待、移民、出産も扱う。俳優が全員アフロアメリカンの作品も世界で初めて手がけた。

1920年頃、彼女は忽然(こつぜん)と映画界から姿を消す。重要な仕事をしたのに、現在彼女の名を知る人は少ない。本作はその理由をアメリカ人パメラ・B・グリーン監督が、綿密なリサーチで解き明かすドキュメンタリー。撮影の過程で子孫や関係者に接近し、思い出の品や貴重な資料を発掘していく様は見ていて心が踊る。ピーター・ボグダノヴィッチ、アニエス・ヴァルダ、ピーター・ファレリーら映画人のコメントも挿入されるが、こちらはちょっと目まぐるしい。鑑賞者の息継ぎを許さぬ急ぎ足編集なので、もう少しゆっくり味わえたらと感じた。ナレーションはジョディ・フォスター。博学そうな彼女も、この仕事を受けるまでギィの存在を知らなかったとか。男たちに書かれた映画史も、書き直される必要があるだろう。さて、フランスは映画館が再開。映画鑑賞中以外はマスク着用が義務となっている。(瑞)


 

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