ブラジルに帰化したスイス人写真家クラウディア·アンデュジャール(1931-)が、30年来撮り続けているヤノマミ族の写真を集大成する展覧会。
ヤノマミはヴェネズエラとブラジルの国境付近に住む少数民族で、人口は3〜4万人。1940年代にブラジル政府が国境調査のため人を派遣した時に初めて現代文明と接触した。その後、アマゾンの道路建設者や金の違法採掘者によって疫病をもたらされ、何度も危機的な状況に陥った。アンデュジャールは写真家としての枠を超え、ヤノマミの権利を守るためのNGOを立ち上げた。
展覧会のタイトルは 「ヤノマミの闘い」だが、猛々しく抗議運動をするようなシーンはなく、日常生活と儀式が淡々と写し出される。これはヤノマミと彼らを支援するアンデュジャールの日々の抵抗の記録なのである。
1階 (Rez-de-chaussé)には、番号をつけた肖像写真が並んでいる。妙に懐かしい、味のある顔の人が多い。白人の病気に対し抵抗力のないヤノマミの健康を守るため、アンデュジャールはワクチンや血液検査を勧めてきた。ヤノマミには個人名がないので、誰を検査したのかわかるよう、人と番号を一緒に撮って記録に残したのだ。生き延びるための処置だが、家族をナチスの強制収容所で亡くしたアンデュジャールには、ユダヤ人が強制収容所で識別番号を入れ墨された記憶が重なる。ボルソナロ政権になって、先住民の権利が著しく侵害されている。ヤノマミの闘いは今も続く。(羽)
* 5月10日までの予定だったがコロナで中断を余儀なくされ、9月13日までの開催に。
Fondation Cartier pour l’art contemporain
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