冬空に凍えながら歩く人々を、黙って上から見守る街路樹は、いくつの人生を眺めてきたのだろう。そんな木々がオレンジ色の切り株に姿を変え、人生の小さな物語を無料で配る機械になっていた。
パリ市内に5つある物語マシーン。1分、3分、5分、いずれかのボタンを押すと、その時間内に読み切れる読み物が巻物のようにプリントされる。内容は出てのお楽しみ。
この機械を考案したのはグルノーブルに2011年に設立された「Short Édition」という短編作品専門の出版社だ。超短編小説、詩など、配布される作品のほとんどは無名の作家が書いている。出版社のサイトに連日送られて来る作品から編集委員が選んだもので、隠れた才能を発掘し、人々に読書の楽しさを味わってもらおうという試みだ。
現在全国70カ所以上の駅・公共スペース等に設置されているこのマシーン。実は、海を越えて遥か遠くサンフランシスコでも物語を配っている。映画監督フランシス・コッポラが、自身が経営するカフェに一台導入したのだという。
小さな物語が、希望をくれたり、去年の心の傷を癒してくれるかもしれない。新しい年は始まったばかりだ。(仙)
パリ市内には、東駅、オステルリッツ駅、モンパルナス駅、ショッピングセンターItalie Deuxなどに設置されている。