パリには、約100の共同菜園がある。その多くは非営利団体のアソシエーションが運営しており、さまざまな年齢や国籍の人が和気あいあいと野菜や花を育てている。リタイアしたおばあちゃん、エコロジー志向の若いカップル、小さい子どもを連れた家族連れ、時には外国からやってきた難民までが、それぞれに知恵や力を出し合って、街の中に小さな緑の空間を作っているのだ。
13区のある共同菜園を訪れると、そこは秋色に染まっていた。石の壁には真っ赤なブドウの葉が風に揺れ、香り高いバラは、寒さに負けずに今年最後の花を咲かせている。大きなカリンの木にはたわわに黄色い実がなり、地面にはカボチャがごろごろ。土を掘り起こすと、小さなジャガイモが顔を出す。中でも週末ガーデナーたちを喜ばせているのは、初夏には小さな苗だったブロッコリー。立派に育って、今がちょうど収穫時期だ。こうやって土に根を張っているその姿を一度見たら、ブロッコリーの食べ方も変わってしまう。
帰りがけ、緑のトマトを山盛りもらった。赤く熟れる前に秋を迎えてしまったこんなトマトは、コトコト煮てコンフィチュールにするとおいしくいただけるのだという。(さ)