『 旅情 』をこの夏、もう一度。

デヴィッド・リーンの名作

Ⓒ Carlotta Films

Ⓒ Carlotta Films

ヴェネチアを旅行したことありますか?鉄道で行ったことありますか?この陸路はなかなか感動ものです。海に挟まれた長い鉄橋を通ってヴィネチア島はサンタルチア駅に着き、駅前広場の階段を降りると、そこは大運河(カナル・グランデ)の船着き場。

映画『Vacances à Venise /旅情』の出だしはまさにこれ!こうして駅に降り立ったのはアメリカ人観光客のジェーン(キャサリン・ヘプバーン)。オールドミス(←死語?)の彼女は強気で女性の一人旅を満喫しようとするけど、やっぱり寂しい。カップルばかりが目に止まる。そんな彼女の前にシルバーグレーの粋なイタリア男、レナート(ロッサノ・ブラッティ)が現る。彼女の心は揺れ動く。骨董屋を営む彼の店で買った年代物のヴェネチアングラスは本物か?甥だと紹介された青年が実は彼の息子であることもバレる。それに対する彼の弁明は真摯に聞こえるが…。ジェーンは一抹の疑惑をレナートに抱きながらも、清水の舞台から飛び降りるように彼の胸に飛び込んで至福の時を過ごす。でも彼女は旅立つ決心をする。サンタルチア駅でのラストの別れのシーンは有名だ。『旅情』(←当時の邦題の付け方は上手!)はメロドラマの名作として知られ、日本でも大ヒットしたイギリスのデヴィッド・リーン監督1955年の作品。登場人物も物語展開も余りにステレオタイプでちょっと気恥ずかしくなるけど、古典ということで良しとしよう。それにヴェネチアはやっぱり素敵です。

昨今は旧作名作を手軽にDVDで観られるが、同時に修復された美しいデジタルリマスター版の劇場再公開も盛ん。特に新作にめぼしいものが少ない夏場は、クーラーの効いた映画館で名画鑑賞がオツだ。マルコ・ベロッキオ『ポケットの中の握り拳』(1965)、北野武『菊次郎の夏』(99)、コーエン兄弟『ファーゴ』(96)、アーサー・ペン『小さな巨人』(70)、ダグラス・サーク『心のともしび』(54)『天はすべて許し給う』(55)などが、今夏リバイバルされます。(吉)